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クリスマス一週間前 ---- 思えば、思春期を経たあたりから、毎年12月はメールを待っていた気がする。 『今年もお前と過ごすことになりそう…』という文面と、泣き顔の絵文字のメール。 それは中学高校と一緒だったアイツからのメールで、大学が別になっても、 社会人でお互いいい年になっても、一年もかかさず続いている。 彼女ができないアイツと、アイツ以外特に友達がいない俺。 アイツは記憶を無くすまで、俺は昼間まで酔い潰れてしまうまで、酒を呑んで 騒ぐのが恒例のイベントだ。 しかし、今年はそのメールに答える気はなかった。 『残念ながら、今年は一緒に過ごせない』 何度も文面を読み直して、意味がきちんと伝わるかを考えて、彼に送った。 すぐにメールが返ってきた。 『マジで?! 誰かと過ごすのか!』 相変わらず打つのが早い。 予想していた答えに、すぐに返事を打つ。 『そうだ』 そう送った後、しばらく返事が来なかった。 何だ、けっこうあっさり諦めるんだな、と思った。 ホッとした気持ちと、残念な気持ちが半分ずつ。あと理由のつかない胸の痛みが少し。 しかし、もっと早くこうするべきだったのをやらなかった俺が悪いのだ。 ふいに携帯電話が震えた。電話だ。 着信画面を見た。…あいつだ。思わずテーブルの上に置いてしまう。 10回以上コールしたと思ったら、留守番電話に切り替わった。 『お前、毎年クリスマスの夜は、酔いつぶれて俺にキスしてるの覚えてないな!  ぶちこわしてやる! 誰かとのクリスマスなんて、ぶちこわしてやるからな!  覚えてろこの野郎!』 ピーーーッという音がして電話が切れた。 思わず顔が熱くなる。 知ってたよ、毎年明け方に俺がキスしてることぐらい。俺は記憶あるもの。 でもお前、そろそろ結婚しないと社会的にまずい年齢だろ。いつまでたっても、 俺につきあわなくていいよ。 もう一度携帯電話が震えた。 10回コール。そして留守番電話のメッセージ。 『…好きだったのは、俺だけかよ』 俺は耐え切れずに電話をとった。彼が続けて呟いた『好きなんだ』という一言が直で耳に届いた。 「バカヤロウ、知ってるよ全部! 毎年酔って俺に告白してるの忘れやがって!  クリスマス前しか連絡くれないのに、好きなのは俺だけとか言ってんじゃねぇよ。  ふざけんな」 一年に一回しか、会いにくる度胸が無いくせに。 アイツはしばらく絶句した後、こう言った。 『今年も一緒に過ごそうよ。この先もずっと。もうクリスマスだけ勇気出すとか、  変なこと考えないからさ…その…今年はお互い酒無しで会おうよ』 俺は返事をせずに、ただ目を閉じた。 サンタクロースには一週間早いぞバカ野郎。 ----   [[クーデレ×ツンデレ>9-329]] ----

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