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たんぽぽ
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春になると幼稚園以来の友人がよく持ち出す話題がある。
幼稚園の頃オレがあいつを苛めて困らせた思い出話だ。
当時あいつはタンポポの綿毛を飛ばすのが大好きで、
綿毛になっているのを見つけては吹き飛ばしまくっていた。
あいつがあんまりタンポポに夢中だったから、まわりの子どもや先生も
あいつにタンポポの綿毛をあげたりしていた。
でもオレはそういう奴らの差し出すタンポポの綿毛を横から
ぷうぷうと吹き飛ばしまくった。
オレは結構そういう悪戯をする子どもだったけど、あの時は
徹底的に邪魔をした。
そうするうちにタンポポはどれも葉っぱだけになった。
「あれすごく嫌だったなあ」
「…ほい、どうぞ」
友人に綿毛のタンポポを差し出した。
友人は笑みを浮かべて受け取るとふうっと校庭に向かって吹いた。
友人にタンポポの綿毛を差し出すのが昨年以来の二人の遊びになった。
タンポポの綿毛を吹き飛ばす、いい年して子どものような友人の横顔を
見つめながら「あの頃は多分友達になりたかったんだよな」と思う。
でも今は、タンポポの綿毛を吹き飛ばすその口に触れてみたい。
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[[本屋>9-239]]
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