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紳士受け ---- 「わかりました」  と言われたからには、合意の上だ。何の問題もない。年の差も、立場の差も。  ネクタイは自分で外してくれた。  そのおぼつかない手つきを見て、引きちぎるようにボタンを外したのはこっちだった。  外しながらキスをした。  まったく為すがままに、息継ぎもできずに呼吸を荒くするので、俺はますます余裕をなくす。  ズボンに手を伸ばして、ビクッと腰を引かれた。 「……よしてください」  やわらかく拒絶。  こんな時まで敬語使いだとちょっとおかしくなりながら、ああ、やっぱりという思いがする。  本来ならこんなことできるはずもない相手なのだ。 「いいって言ったのに」  責めると、乱れた前髪に隠れるような視線が惑って、 「……まだ、シャワーも浴びていません」  ほっと胸をなで下ろす。 「シャワーは無理です」  と、触れた。布越しにもみしだく。ベルトをはずし、手を突っ込んでこすり上げる。  ずっと妄想してきたそれは、期待を裏切らず反応を高まらせる。  顔を見れば、いつもの穏やかな笑みはなくて、潤んだ目。歪んだ眉。  唇を強く噛みしめているので、またキスすると、吐息が漏れる。  普段からは想像もつかない表情に、やっぱりとんでもないことをしている気がした。  どうしても上司は上司。それも、本来こんなこととはかけ離れた人で。 「だ、大丈夫ですか?」  思わず手を止めた、その時。 「すみません、驚かせました」  腕をつかまれ、逆に謝られてしまった。  できる限りの冷静さを装った、でも隠しようもなく震える声。 「君に軽蔑されるんじゃないかと……今、心配しています」  落ち着くつもりか、ため息のような深呼吸を二、三度繰り返し、それでも乱れた息づかいのまま、 「自制ができなくて、恥ずかしいです。でも、どうぞ、続きをお好きなように」  とん、と俺の肩に頭を預けて言ってくれたので。  俺は、その首筋も、俺の手の中の固く張り詰めたものも、全部俺のものでいいんだと、ようやく理解ができたのだった。 ----   [[権力者の初恋>22-249]] ----

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