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攻めにだけ甘い受け
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レモンは孤独だった。
いつも一人ぼっちというわけではなかったが、彼は孤独だった。
元来、彼自身が直接口にされることは稀である。
そのため彼は、砂糖をその身に纏ったり、クリームに身体を沈めたりしていた。
ときには、果汁を搾り出して抜け殻のようになることもあった。
それらはある意味、自分を偽る行為と言えたが、彼は気にしていなかった。
強い酸味は己の宿命であることを、彼は充分に理解していたのだ。
そしてそれ故に、自分のあるがままを受け入れられることは難しいことも。
いくら味を薄められ誤魔化されても、この酸味が必要とされるなら、それで良いとも思っていた。
ただ、自分を見て周囲が眉をしかめ「酸っぱそう」と囁く度に、彼の心は少しだけ痛んでいた。
ところがある日、そんな彼の前に一人の男が現れた。
彼の名はミラクルフルーツ。
彼は笑顔でレモンに言った――『君はとても甘い味がするね』
レモンは最初、この男は何を言っているのかと驚いた。
酸っぱさから敬遠されている自分をからかっているのだと思った。
しかし、ミラクルフルーツは大真面目であった。
彼にとって、レモンは本当に甘かったのである。
レモンはずっと、強い酸味は己の宿命、アイデンティティであると思ってきた。
甘い甘いと喜ばれるのは他の者の領分で、自分には関係ないと。
ところが、初めて「甘い」と言われ、彼は己の内から沸きあがってくる感情に戸惑っていた。
その感情が喜びなのか、アイデンティティの揺らぎに対する不安なのか、わからない。
しかし、目の前でニコニコ笑っているミラクルフルーツを見ていると、どうでも良いことに思えてくる。
「お前は本当に変わってるな。俺を甘いだなんて」
「まあ、自覚はあるけどね。僕は変わり者だ。でも嘘はつかない」
「知ってる」
「本心だよ。君はとてもとても甘い。齧りつきたいくらいだ」
「ふん」
「ま、僕にとって、という条件付きだけどね」
「……構わない。お前にとってだけ、俺は甘くあろう」
そう言って、レモンは少しだけ笑った。
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[[幼馴染でNTR>22-129]]
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