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長針と短針と秒針 ---- ごめんね、また来ちゃった。1分って短いよね。 僕と同じ職場のチームである短針と長針が、最近特別に仲良くなったので、僕はとても気まずい。 同じライン上を3人でぐるぐる回るこの仕事が恨めしい。 嫌でも気づくよね、いかにも怪しい雰囲気出してもんね、あのふたり。 短針は、もともとおっとりのんびり屋。 どっしり構えて物に動じないタイプだから、ともすれば焦りがちな長針をなだめて支えてあげてるみたい。 長針はスラリとスマートで、仕事もできる奴だけど、短針にべた惚れなのは見てておかしいくらいだ。 ふたりが仕事ですれ違う瞬間、それこそが彼らの待ってる時。 それはほぼ1時間と5分くらいの間合いで訪れる。 12時ちょうど。その次は1時5分27秒。2時10分54秒。3時16分21秒。4時21分49秒……そして11回目にまた12時ちょうど。 短針が数字と数字の間のほんの少しの距離を進む間に、長針は出来る限りのスピードで一周してきて追いつく。 待っていた短針に後ろから駆け寄ると、そっと寄り添うんだ。 僕たちの職場が、昔風のカッチカッチとひと目盛りずつ進む時計でなくて良かったね、と思う。 長針の動きはなめらかで、だからとても短い時間、ふたりは重なることができる。 それは本当に短い逢瀬だ。長針はすぐに進まなきゃいけないし、短針は長針について行けないから。 それでもふたりはその瞬間をとても大切にしていて、うっとりしちゃって、見ているこっちはいたたまれない。 ……そう、見てるんだよね、僕。だってここ僕の仕事場でもあるわけで。 1分にひと回りするのが僕の仕事だ。決して僕は悪くない。 ふたりのわずかな大切な時間を、僕だって邪魔したくない。 だけど僕は、どうしてもふたりの上を通りすぎてしまうことになる。 そりゃ、なるべく見ないようにしてるよ。そんなときはふたりも「あくまでこれは仕事上のやむを得ないスタイルなんです」って風を装ってるし。 でも恋人同士のあれやそれは止まんないよね。 特にこんな暑い夜ふけなんかはやっぱその気になるんだろうね。 さっきなんか。 (あれ、絶対やってるよね……) ……ごめん、見るつもりなかった。暗くてわかりませんでした、うん、はっきりとは。何となく。 ため息が出るよ。ほんと悪いっつうか、もう僕、仕事やめよっかなって感じ。 最近なんか、ふたりが一緒でない時ですら、僕なんかが1分ごとに来てごめんなさいとか思ったりして。 秒針やめてストップウォッチとかに転職しようかなぁ。あれ確かひとりの職場だよね。 それともどうせ3人切っても切れない仕事仲間なんだから、僕も仲良くさせて? なんて。 言えないよなぁ。 僕、どうせ早いしなぁ。 ----   [[女装が似合う攻め×女装が似合わない受け>22-069]] ----

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