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ツンデレ攻め ---- 別に俺はあいつのことが好きなわけではない。 俺とあいつは幼馴染だ。だから小さいときには何の気兼ねなく遊ぶことができた。 それも7~8歳くらい間での話で、成長すると共に身分の差が共に過ごすことを許さなくなった。 あっちは領主様の息子でこっちは酒場の息子。そりゃいられるわけもないし、それについてどうも思っていなかった。 あいつが俺と離れて、近くの領主の娘と結婚をしたことを式の3日後に知ったときもどうとも思っていなかった。 まぁ、酒屋の跡継ぎには年の離れた異母兄がいたし、見識を深めるという名目で冒険者になって旅に出ることにした。 自分の家で冒険者ギルドに提出する書類を纏めて正式に冒険者になったのが8年前。 今ではそこそこ凄腕の冒険者としてギルドに認められている。 上には上がいるが国や貴族に騎士にならないかと誘われるくらいには実力がある。 8年間便りも出さず顔も見せずにいた故郷に向かった理由は、強大な魔物の出現だった。 領内の魔物が減っているから軍備を削減していたらしい。あいつの治める土地は、たちまち危機に陥った。 そうなると困るのが領民というわけで、残した友人や俺の家族が無事かどうかを知るためにも、行動を共にする仲間に頼んで急いで帰らせてもらうことにした。 「悪いな、俺個人の問題なのに」 俺一人だけで行くといったのにも関わらず仲間は全員着いてきた。 「いいっていいって。俺もシュンの故郷気になるし」 と軽く言葉を返してくる魔法使いのプラン。俺と行動を共にするまでは子どもなのに一人で旅をしていた、俺の最初の仲間だ。 「ああ、私もだ。それにご家族の安否が気になるのであろう? それに未来のご家族にもご挨拶を……」 相変わらずのアホ賢者、ジジカ。せっかくの研ぎ澄まされた知性や美貌も使いこなす人間がこれでは意味がない。 「アホか……まあ賢者の言い分はあながち間違ってない。はやく家族の下に行かなくては」 珍しく武道家のリュウが賢者に乗る。その部分は俺も訂正しない。 久々に見た故郷は、面影のない土地に変貌していた。 それは急いでこの地に戻ってきているときにも自覚していたことだが寂しい。 昔と違い道が整備されている。これなら雨の日も水溜りが出来たり足場がもろくなったりする危険性は低いだろう。 町も市場も建物も全く違う風景になっていた。 あいつの統治しているこの場所は周辺からも評価されているらしい。 軍備を減らされていたために常備軍の数は減ったがギルドを通して衛兵を雇ったり、自ら立ち上がった志願兵によって均等を保っているらしいが最近は悪い風に崩れかけているらしい。 特に北の山から来る魔物と、西から来る海の魔物には手を焼いているらしい。 この情報は商人から聞いた。こんな状況でも金の臭いのするところには足を運ぶのが商人だ。冒険者をやっている俺が言える立場ではないが、命は惜しくないのだろうか。 情報源の手に銀貨3枚を握らせた後そういえばと俺は切り出した。 「ここの領主はどうしている?」 別にあいつが気になっているわけではない。あいつの今後の行動しだいでは俺の故郷が大変なことになるからだ。 情報のあいつでは寝る間を惜しんで同盟を結んでいる領地からの武器や食料の手はずを整えているらしい。 この土地の6人の商人から情報をいくつか手に入れた後、仲間と合流した。 「へえ、結構いい領主っぽいじゃん。軍備を減らしていたのは痛かったけど」 と背伸びをしながらあいつの評価をする。 「領民からも慕われているみたいですしね」 プランの評価にジジカが合わせる。そのいつもと変わらない様子に笑ってしまう。 「ああ、耳にたこが出来るほどこの町が豊かになったのもあの人が治めてくれてるからだって聞いたな」 リュウが2人の話に乗る。意図はなんとなく掴めるが聞いたことのない表現で話している。こいつの故郷の言葉らしい。 「リュウ、耳にたこが出来るとは……」 「しつこいほど聞かされたって意味だ」 東の国の言葉には悩まされる。母もこんなことをいっていたような気がする。 まずは戦った経験の多い山の魔物と戦っている北の支援に向かい、倒した後西に行った。 俺達が手助けをしたところはそこだけで、他の場所は自力で何とかしたらしい。 そして会うことがなくなってからちょうど10年目になるあいつに表彰されることになった。 異母兄はこの戦いで片腕をなくしたがまだ酒場を続けていくらしい。 「いまさらお前の出番はないぞ? あとを継ぐのは俺の息子だしな」 といって俺の方を豪快に叩くことが出来るのだからあと10年は大丈夫だろう。 いや、30年かもしれない。あいつが領主になってから領民の寿命が桁違いに上がったらしいしな。 きょとんと俺をみるティーに向かって苦笑しながらお前の叔父さんだと伝えてやった。 そうか俺も23歳。あまり健康的な生活は送れていないから、あと10年生きていられれば御の字だ。 あいつも25歳、結婚して8年になる。時間の流れは速い。 あいつはどんな顔をしているのか、うろ覚えの記憶の中きれいな金髪を少年を探し出した。 もう俺もあいつも少年じゃない。 あいつは領主の息子から領主になって、俺は酒場の息子から冒険者になった。 それでも記憶の中のあいつは少年のままで、笑った。 「そういえばシュンと友達なんだって? ここの領主」 昔を知っている近所のおばさんに聞いたよと言っているプランの目を見た。 「昔の話だ」 これ以上その話に触れないでほしいという意味をこめてプランに言葉を返す。 「ふーん」 わかっているんだかわかっていないんだか、良くわからない返事が返ってきた。 そして興味がこの土地の特産の果物に移り、子どもらしくはしゃぎまわった。 久々に会ったあいつは俺のイメージはもちろん、予想より遥かに老けていた。 きれいな金髪は白髪になって顔にはしわが出来ている。 「魔物との戦いで老け込んでしまいましたわ。戦いの前はもっと若々しかったんですの」 と綺麗な奥さんが暖かいまなざしであいつを見つめながら言った。 表彰されるときに見たあいつの目は赤く充血していた。 そのとき記憶が掘り起こされた。昔のあいつは泣き虫だった。あいつが泣いていた時はこんな目をしていた。 当然目が充血していたのは睡眠不足と疲労によるものだろう。 綺麗な奥さんがいて、可愛い子どもがいて、大切な領地を守ることが出来た。 そんなあいつが泣く理由なんてない。 「見ないうちに老けたな」 表彰式が終わった後2人だけで話したいというあいつと部屋に入って初めて掛けた言葉だった。 「おまえは変わらないな。その黒い髪も象牙の肌も」 俺の色は母の特徴譲りだ。母はリュウと同じ東の国からやってきたらしい。 話の切り出しはこんなもので、後は酒とつまみを食べながら他愛もない話をしていた。 「そういえばなんでおまえは俺に何も言わずに旅に出たんだ?」 「そういえばなんでおまえは俺に何も言わずに結婚したんだ?」 くだらない質問には答えを返さずにくだらない質問で対応していた。 だから話していた内容は全て他愛もないものだ。 酒を飲んで話をして夜が明ける前に、俺は故郷を離れることにした。 ここに留まったらどうだという古い知人の言葉に感謝の意を示した後それでも旅に出ると伝えた。 そうかといったきり背を向けていつでも歓迎するという言葉を聞いた後俺は仲間の下に向かった。 仲間はどんな話をしたのかは聞かなかった。その代わり酒臭いとプランが非難してきた。 リュウの肩を借りて場所の移動の途中寝ることにした。 プランとジジカが何かわめいていたが気にせず寝た。 起きたとき朝日が眩しかった。けれどもこれでこれからは金髪の少年の夢を見ることはないだろう。 夢の中で告白することも、結婚をさせまいと攫うこともないだろう。 なぜならば俺は別に俺はあいつのことが好きなわけではないからだ。 ----   [[学校の怪談話>22-019]] ----

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