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彼のことを、知り合いの誰もが知っているのに僕は知らない ---- ――彼は、僕と同じクラスに居るらしい 同じクラスに居るというのに、僕は未だに『彼』が誰だか分からない。 友達は皆話をはぐらかすから、噂話を盗み聞くしか僕に『彼』の情報を手に入れる手段は無い。 彼のことを思うと、胸がチクリと痛む。 ――彼は、天然ボケらしい 天然ボケなんてクラスに居ただろうか。思い当たる人物はいない。 そもそも天然ボケってのがなんなのかよく分からない。 そもそもここは特進クラスだ。頭の悪いやつなんかいる訳ないのだが… ――彼は、アイツに下の名前で呼ばれているらしい 正直、うらやましくて仕方が無い。 僕は何度心の中でアイツを名前で呼んだことか。 けれどいざ、アイツの前に立つと照れてしまって結局名字で呼んでしまうのだ。 ――アイツは、彼に恋をしているらしい たまたまそれを耳にした時は、泣きたくなるほど苦しかった。 アイツの事は何でも知っていると思っていたのに、僕は『彼』なんて知らない。 アイツの一番近くにいるのは僕だと、勘違いしていた。滑稽な話だ。 今頃、アイツは彼の隣にいるのだろうか―― 「藤…っ、い、いや…そ、宗太っ!」 「え、清水?どうしてここに…」 「ちょっと、聞いて欲しいことがあるんだ。」 ――アイツは今日、彼に告白するらしい ---- [[痛々しい>20-859]] ----

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