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黒い騎士と白い騎士 ---- 忠誠を誓わないかわりに、紋章の入った盾と鎧を黒く塗りつぶす。 俺は黒騎士と呼ばれるただの雇われ傭兵だ。 金がないから金を稼ぐために兵になる。だが決して忠誠は誓わない。 戦うのは名誉のためでもなく主のためでもなく自分のため。 王直属の騎士達は俺達を蔑み、国王も俺達を捨て駒として使う。 俺達も死にたくはないからより一層腕を磨く。そうして力でねじ伏せていく。 ある日、俺達の戦場に若い銀髪の騎士が来た。その美貌は見るものすべての心を奪うほどだった。 代々国王の近くで仕えてきた貴族の跡取りだという。 ただ彼は果てしなく潔癖で、傭兵達の秩序の無さを非常に嫌った。 ただでさえ傭兵は争いで気が立っているというのに、ことあるごとに叱責されてはたまらない。 次第に黒騎士達は彼に反発心を抱くようになった。「白騎士さん」と彼を揶揄して呼ぶものもいた。 しかも女っ気のない所に、そこらの女よりも各段に美しい人間がいるのだ。 怒りと邪が増幅し、ある日、黒騎士たちが彼のテントに押しかける事件が起こった。 悲鳴が聞こえ、俺はすぐに彼のテントに向かったが、そこには予想に反して、黒い鎧を着たものたちが血まみれになって累々と倒れていた。 顔面蒼白になった彼の手には、真っ赤になった剣がぶら下がったままだ。 「落ち着け…。俺は敵じゃない」 「はっ…はぁっ…はぁっ…」 全身で拒否する彼をなだめ、何があったのかを確認した。 初めは心を閉ざしていたが、次第に口をひらき、複数の男たちに抑えつけられ犯された事。 そのうちに興奮が高まり、命も奪われそうになった事を俺に語った。 「私を汚した者は絶対に許さない…」 震える声で怒りを口にする彼は美しかった。 なんて崇高で美しい騎士だろうかと俺は思った。 年月が経ち、俺はまたその国の傭兵として雇われることになった。 最初の仕事として命じられたのが、国王を裏切り敵に重要な情報を流した騎士の処分だった。 今、目の前にいる騎士は、昔の俺に「国王に忠誠を誓わない者は騎士ではない」と言っていた者だ。 「一つ聞きたい。何故、お前はそんなことをしたのだ。この世で最も崇高で潔癖な騎士だったのに」 俺は剣をかまえながら彼に聞いた。 「国王が私を汚したから」 その一言で何があったのかはわかった。 彼は静かに目を閉じた。 本当は彼に会ったら言いたい事があった。 もしお前が一緒に戦いたいと望んでくれるなら、俺は国王に形だけの忠誠を誓ってもいいと。 だが、もうそれは遅かった。 俺はそのまま剣を振り下ろした。 ---- [[黒い騎士と白い騎士>20-839-1]] ----
黒い騎士と白い騎士 ---- 忠誠を誓わないかわりに、紋章の入った盾と鎧を黒く塗りつぶす。 俺は黒騎士と呼ばれるただの雇われ傭兵だ。 金がないから金を稼ぐために兵になる。だが決して忠誠は誓わない。 戦うのは名誉のためでもなく主のためでもなく自分のため。 王直属の騎士達は俺達を蔑み、国王も俺達を捨て駒として使う。 俺達も死にたくはないからより一層腕を磨く。そうして力でねじ伏せていく。 ある日、俺達の戦場に若い銀髪の騎士が来た。その美貌は見るものすべての心を奪うほどだった。 代々国王の近くで仕えてきた貴族の跡取りだという。 ただ彼は果てしなく潔癖で、傭兵達の秩序の無さを非常に嫌った。 ただでさえ傭兵は争いで気が立っているというのに、ことあるごとに叱責されてはたまらない。 次第に黒騎士達は彼に反発心を抱くようになった。「白騎士さん」と彼を揶揄して呼ぶものもいた。 しかも女っ気のない所に、そこらの女よりも各段に美しい人間がいるのだ。 怒りと邪が増幅し、ある日、黒騎士たちが彼のテントに押しかける事件が起こった。 悲鳴が聞こえ、俺はすぐに彼のテントに向かったが、そこには予想に反して、黒い鎧を着たものたちが血まみれになって累々と倒れていた。 顔面蒼白になった彼の手には、真っ赤になった剣がぶら下がったままだ。 「落ち着け…。俺は敵じゃない」 「はっ…はぁっ…はぁっ…」 全身で拒否する彼をなだめ、何があったのかを確認した。 初めは心を閉ざしていたが、次第に口をひらき、複数の男たちに抑えつけられ犯された事。 そのうちに興奮が高まり、命も奪われそうになった事を俺に語った。 「私を汚した者は絶対に許さない…」 震える声で怒りを口にする彼は美しかった。 なんて崇高で美しい騎士だろうかと俺は思った。 年月が経ち、俺はまたその国の傭兵として雇われることになった。 最初の仕事として命じられたのが、国王を裏切り敵に重要な情報を流した騎士の処分だった。 今、目の前にいる騎士は、昔の俺に「国王に忠誠を誓わない者は騎士ではない」と言っていた者だ。 「一つ聞きたい。何故、お前はそんなことをしたのだ。この世で最も崇高で潔癖な騎士だったのに」 俺は剣をかまえながら彼に聞いた。 「国王が私を汚したから」 その一言で何があったのかはわかった。 彼は静かに目を閉じた。 本当は彼に会ったら言いたい事があった。 もしお前が一緒に戦いたいと望んでくれるなら、俺は国王に形だけの忠誠を誓ってもいいと。 だが、もうそれは遅かった。 俺はそのまま剣を振り下ろした。 ---- [[彼のことを、知り合いの誰もが知っているのに僕は知らない>20-849]] ----

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