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いまさら言えない ---- 「好きだ」 何度口に出そうと思ったか。 でも、お前の想いは知っていたから、言えなかった。 言ってしまえば、優しいお前の事だ…真剣に悩んでくれただろうな。 もしかしたら、身分違いの恋なんて諦めて、俺の傍に居てくれたのかもしれない。 でも、もう遅い。 お前がこの国から居なくなって10年。今日、この国に新たな法律が加わった。 同性同士の婚姻の自由。 記念すべき同性婚第一号はこの国の元王子と、その側近の騎士。 正直、まだ世間の風当たりは厳しい。 心無い言葉で彼らを罵倒する民衆も少なくない。 それでも幸せそうな二人の姿を見て、逆風は収まりつつあった。 ああ、本当に幸せそうで、涙が出る。 悔しいのか?悲しいのか?…分からない。 一つだけ分かるのは、素直に祝福できないという事実だった。 休日、街の市場で最悪な光景を目にしてしまう。 「お!マーロ!久しぶりじゃないか!」 「ああ、こんにちは!マーロ騎士団長」 そこには、市場で仲睦まじく買い物をしている二人の姿があった。 「ああ、どうも」 最悪だ。二人がこの国に戻ってきて数ヶ月、会わないように避けてきたというのに…。 「最近どうだ?騎士団のほうは」 「お前が居なくたって、わが国の騎士団は最強だ」 「そうだな!」 ははっと朗らかに笑う声…ああ、好きだ。 「シオ…騎士団に復帰する気はないか?」 「んあ?」 「最近、近隣の強国が戦の準備を始めていると聞く。 お前の力が必要になるときがくるかもしれない」 「…そうか?俺が居なくてもわが国の騎士団は最強なんだろう?」 「お前が指揮をとれば、より強くなれる」 「……悪いな、マーロ。俺は今まで、確かに国のために全力で戦ってきた。 でも、ホントは国の為なんて建前で俺は…愛する人を守りたかったんだ」 そう言いながら、シオは俺のほうに視線を向けてはいなかった。 その視線の先には、国よりも自分の欲を選んだあざとい元王子。 みすぼらしい格好に落ちたその姿には、かつての王族の威厳など一つも見えなかった。 こんなのの何処が良いんだか…。 「そうか…残念だよ」 俺はそう言うと、彼らに背を向ける。 「気が向いたらまた声をかけてくれ…」 「ああ、またな」 去り際、二人の会話が聞こえてくる。 「今夜は野菜のスープとパンだね」 「すまんな、ニト…俺に稼ぎがあれば…肉食わせてやれるのに…」 「いいんだよ。元々肉好きじゃないし」 「よっし!たまには狩りにでも出るかな!」 「おお!良いね!私も弓の腕前を見せてあげるよ!視力が戻ってから特訓したからね!」 二人の笑い声に、耳を塞ぎたくなる。 喉元まで出かかった言葉…やっぱり言えなかった。 タイミングを逃してしまった以上、多分、もう、一生口には出来ない。 「結婚…おめでとう…」 ---- [[探偵と○○>20-659-1]] ----

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