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プラシーボ効果 ---- どういう会話の流れだったのかは忘れた。 俺はクラスメートの和哉に対し 偽薬の効果について、浅い知識を披露していた。 「睡眠剤だって信じてれば、ただのビタミン剤でも効いたりすんだって。」 ラムネ菓子のタブレットをかじりながら、のんびりと和哉が答える。 「思い込みは怖いって事かー」 「信じるものは救われるとか言おうぜそこは」 川原沿いの長い道をくだらない話を続けながら歩いていると ふと思いついたように和哉が言う 「なあ、惚れ薬もそういうのあるのかな」 「ん?何?」 「信じるものは救われるって薬の話だよ」 「お前は惚れ薬なんざいらんだろーがモテ男」 惚れ薬なんて単語が和哉から出るのを、少し意外に思った。 和哉はなかなかに整った、それでいて優しげな顔立ちをしている。 実際温厚で親切でもあったので女子からすこぶる評判が良かった。 派手に騒がれはしないものの 毎年バレンタインには本命チョコを2,3個渡される、 そういうモテ方をしていた。 それなのに彼は彼女達を丁寧に振ってしまうのだ。 恋愛自体に興味がないのか、とも思ってたけど そんな訳でもないようだ。 その時の一瞬の沈黙に、気づいたのは後になってからだ。 「だといいんだけど」 少し寂しげな微笑に、好きな奴でもいるのかなと思ったが黙っていた。 未だに彼女を作らないのも、それなら納得というものだ。 「ハイレモン俺にもくれよ」 和哉に声をかけると、ポケットからシートを取り出し ぱちん、とシートから一錠手のひらに落とされる。 クリーム色の錠剤を口に放り込んだ瞬間、 和哉が一瞬真面目くさった顔をして言う。 「これ惚れ薬なんだ」 突飛な冗談に吹き出して、なんて言ってやろうかと和哉の顔を見た瞬間 笑いが喉で固まってしまった。 どこか切羽詰ったような、おびえと、熱のこもった視線 ああ、和哉に告白した女の子が、こんな表情をしていた気がする。 「信じてよ」 暮れかけた夕陽が、和哉の整った輪郭を陰影濃く彩っている。 視線は俺から外さないまま 和哉はいつもよりぎこちなく、それでも優しげに笑ってみせた。 噛み砕いた媚薬のかけらが、舌の上で甘酸っぱく溶けた。 ---- [[あと少しだけ待ってて>20-419]] ----

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