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はじめて同士 ---- 「え?」 お互いに固まった。 さっきまで、こっちがいいやらあっちがいいやら、明日の初デートに備えてファッションショー。 ベッドの上に散らかした服達の中から選んだジーンズ。 それを手にして顔を上げたら、勢い良くぶつかった。 唇。 ガチンと音がして、口の中が切れたみたいだ。 さっきまでの笑いあっていた空気が、今では音もなく固まっている。 「あー…、ごめんな」 笑ってポンと肩を押す。 「彼女より先に奪っちゃった」 てへっとワザと馬鹿っぽい声も出す。 吉沢は口元を押さえたままで、固まりきっていて反応がない。 ああ、真面目そうだもんな、吉沢。 ショックだったんだろうな。 未だ固まったままの吉沢の目の前で、ヒラヒラと手を振る。 「よぉしざぁーわー?」 ハッとした表情で一瞬ビクリとした吉沢は、ベッドの上であからさまに及び腰。 赤い顔して逃げる様に距離を作って、無言で何度も顔を振る。 日頃のクールぶった態度が嘘みたいだ。 「なに?お前、初めて?」 制服の白いシャツの上から胸元を押す。 さっき以上に慌てふためく様子が可愛い。 選んだブラックジーンズに、ラグランを投げつけ、オレはベッドの上で立ち上がる。 「大丈夫、今のは不可抗力だから。サトコのチューと一緒だべ」 うちの可愛い御年18歳になるサトコお嬢。 オレらよりも2つも年上の、それはそれは怖いけれどもチュー魔で可愛いシーズー。 怒ると踏み踏み足踏みをする。 サトコとチューは毎日だから、それと一緒。 ピョンと勢いつけて、スプリングの利いたベッドから飛び降りる。 さっと両手を広げて足を揃えた見事な着地。 「じゃあな」 見たこともない彼女への嫉妬で泣き出す前に、部屋を出ようとしたオレの手首をがっつりと吉沢が掴む。 なんだ?と思う前に、引き寄せられてキスされた。 「よ…っ」 硬くなって竦んだ首の裏に、吉沢の手が添えられる。 ガチガチに緊張して、唇に歯が当たる痛みに、さっきぶつかった時以上に口の中に血の味が広がる。 オレだってサトコ以外とキスなんてした事ないけれど、こいつのキスがヘタクソだって事だけはわかる。 こんなヘッタクソなキスして、惚れてんのはお前だけだと思うなよ。 彼女どうすんだよ、とは思ったけど、奪えばいいかなんて最初から出ていた結論を胸の中で再確認した。 ---- [[ずっと隣にいて欲しい>20489]] ----
はじめて同士 ---- 「え?」 お互いに固まった。 さっきまで、こっちがいいやらあっちがいいやら、明日の初デートに備えてファッションショー。 ベッドの上に散らかした服達の中から選んだジーンズ。 それを手にして顔を上げたら、勢い良くぶつかった。 唇。 ガチンと音がして、口の中が切れたみたいだ。 さっきまでの笑いあっていた空気が、今では音もなく固まっている。 「あー…、ごめんな」 笑ってポンと肩を押す。 「彼女より先に奪っちゃった」 てへっとワザと馬鹿っぽい声も出す。 吉沢は口元を押さえたままで、固まりきっていて反応がない。 ああ、真面目そうだもんな、吉沢。 ショックだったんだろうな。 未だ固まったままの吉沢の目の前で、ヒラヒラと手を振る。 「よぉしざぁーわー?」 ハッとした表情で一瞬ビクリとした吉沢は、ベッドの上であからさまに及び腰。 赤い顔して逃げる様に距離を作って、無言で何度も顔を振る。 日頃のクールぶった態度が嘘みたいだ。 「なに?お前、初めて?」 制服の白いシャツの上から胸元を押す。 さっき以上に慌てふためく様子が可愛い。 選んだブラックジーンズに、ラグランを投げつけ、オレはベッドの上で立ち上がる。 「大丈夫、今のは不可抗力だから。サトコのチューと一緒だべ」 うちの可愛い御年18歳になるサトコお嬢。 オレらよりも2つも年上の、それはそれは怖いけれどもチュー魔で可愛いシーズー。 怒ると踏み踏み足踏みをする。 サトコとチューは毎日だから、それと一緒。 ピョンと勢いつけて、スプリングの利いたベッドから飛び降りる。 さっと両手を広げて足を揃えた見事な着地。 「じゃあな」 見たこともない彼女への嫉妬で泣き出す前に、部屋を出ようとしたオレの手首をがっつりと吉沢が掴む。 なんだ?と思う前に、引き寄せられてキスされた。 「よ…っ」 硬くなって竦んだ首の裏に、吉沢の手が添えられる。 ガチガチに緊張して、唇に歯が当たる痛みに、さっきぶつかった時以上に口の中に血の味が広がる。 オレだってサトコ以外とキスなんてした事ないけれど、こいつのキスがヘタクソだって事だけはわかる。 こんなヘッタクソなキスして、惚れてんのはお前だけだと思うなよ。 彼女どうすんだよ、とは思ったけど、奪えばいいかなんて最初から出ていた結論を胸の中で再確認した。 ---- [[ずっと隣にいて欲しい>20-489]] ----

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