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神を信じる人と無神論者
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街からちょっと離れたところにあるこの教会はなぜか日曜礼拝にくる人も滅多にいなくて、
最初のうちは俺に聖書を読み聞かせていた牧師も
毎度のように俺が「ここにきているのは散歩のついででキリストを信仰するつもりはない」
とつっぱねてきたせいで、ほとんど世間話しかしないようになっていた。
「今日はよいお天気ですね。北田さんは今日のご予定はあるのですか?」
穏やかな笑みを浮かべて、初老の牧師は俺に尋ねる。
「午後からバイト。」
「働き者なんですね。」
「学生だから土日くらいしかがっつり働けないんだよ。」
宗教には興味ないし知識もほとんどない俺だが、キリスト教徒は日曜には働かないということは
さすがに知っていた。彼が何か講釈をたれるのではないかと危惧したが、静かにほほ笑んだままだった。
「んで、牧師サンはこのあと何すんの?」
彼が俺に何か聞いてくることはあっても、俺から何か聞くってことは今まで多分なかったと思う。
そのせいか一瞬驚いた顔をしてから彼は答えた。
「夕方の礼拝までは時間がありますから、外の花壇にでも水やりでもしますかね。」
教会のステンドグラスからもれてくる光は彼の笑顔と同様にあたたかい。
こじんまりとしていて、ヨーロッパの聖堂とかと違ってきらびやかでも壮大でもない。
でもこの空間が心地よいと思えるようになったのはいつからだろうか。
「俺もバイトまで時間あるんでここにいていいすか?」
無意識のうちに、そんな言葉を口にしていた。
彼は先ほど以上に驚いた顔をする。
相変わらずキリストもブッダもどうでもいい俺だが
聖職者である彼に多少近づいたところで罰は当たらないだろう。そう思った。
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[[胡蝶蘭>20-199]]
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