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もうどーでもいい ---- もうどーでもいい、と大の字に寝っころがった。 竹下は困った顔をして、「お、おい……俺は、そんなつもり、じゃ」とモゴモゴ言った。 「そんなつもりなんでしょ? もうわかったからさー、1回だけいいって言ってんの」 俺は意地悪くせせら笑った。 竹下のことは嫌いじゃないが、ウジウジとまわりくどいのにたまにイライラさせられる。 もともと竹下が言い出したんじゃないか、俺のことが好きだって。 でも見てるだけでいいから、このまま友達でいさせてって。 わかった、と俺は答えた。正直すごく驚いていたし思いも寄らなかったし、 なにより恋愛感情とか隠しそうなキャラだと思っていたから、男らしいじゃんとちょっと見直しさえした。 ところがだ、その日からジットリ熱視線攻撃がすごい。 講義もそうでない時間もまとわりつくって感じで、そんで話すことが 「藤井は女の子とつきあったことある?」「初恋ってさ、どんなだった?」 「歌手の○○ってさー、ゲイらしいよ」「友情と愛情って何が違うんだろうね?」 ……わかりやすい。わかりやすすぎ。 ほんで他の友達交えて飲みに行こうものなら、隣ずっとキープ。 尻寄せられーの、肩当たりーの。 「なんか俺酔っちゃったぁ、ははははは、藤井大好きー!」なんてしなだれかかりーの。 うそだ、お前そんなに弱くないだろうがっ。ときおり鋭く俺と他の奴を窺う視線が痛いっつーの! 好かれて悪い気はしない、が、いい加減嫌になってきた。 俺が竹下のこと好きだって言うの、待ってるんだよな、これって。 正直言うと、俺は竹下のことかなり好きだった、ただし友人として。 話もノリも合う、気のおけない一番の親友。それじゃ駄目だったのかな。 「俺達……友達じゃん」 何度そうつぶやいたかわからない。どうしてこんなことになったんだろう。 何か打開策はないか、と思っているうちに今日も竹下はうちに来て、晩飯食って飲んで、 風呂まで入っていそいそと布団を敷いて、何かを期待している。 期待に応えることはできない。お前と同じ気持ちにはなれそうもない。 でも友達がしたいって言うなら……親友が望むことなんだから、いいのかな、もう。 だってもう疲れたんだ。前みたいに竹下と馬鹿話ばっかりしたい。 ガンダムとか実家の猫とか、そんなどうでもいい普通の話。 「藤井……本当に……?」馬鹿が、前言をひるがえしてにじり寄ってくる。 目をつぶった頬に、暖かい体温が感じられる。 はー、はー、と聞いたことのない荒い息が、すぐ側に聞こえる。 ……馬鹿は俺だ。もう戻れない。 ----   [[好きと嫌いの境界線>20-159]] ----

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