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いたらいたでうざいけど、いなきゃいないで寂しい ---- 明日の時間、あいつまた忘れてるだろう。 電話してやろうかな。どうせ直前になって「何時からでしたっけ……」なんて情けない声でかけてくるんだろう。 そういう甘やかしがあいつを作った、という自覚はある。 近所で幼なじみの腐れ縁、小学校の便所の世話から面倒見続けて中高、会社も同じになって、 彼女ができたら愚痴もデートも親への挨拶まで相談に乗って、どうにか式まで持ち込んだと安心したら 当日寝坊しやがった。 なんで俺がお前を礼服着て迎えに行かにゃならん。なんで一緒に新婦親に頭を下げんとならん。 お前の周りは俺のことをお前の世話係だと思ってる。 おかしい、と思う隙あらばこそ、もうそれが当たり前となっていた自分が恨めしい。 天才、というか紙一重なお前だから当然美智子さんはしょっちゅう怒って実家に帰る。 それを連れ戻しに行かせる、つまりお前に過ちを説いて美智子さんの剣幕を鎮めて親御さんを取りなして…… はたしてこれは俺が世話を焼くことなのか。 それをおかしいと思わないらしい周りの人間もおかしい。 気づけば俺は自分の嫁さんももらわずじまい、俺の人生お前に捧げたっていうことなのか? お前がいなければ俺も人並みの幸せつかめたのか? なのに「浩二郎さーん、どうです、今夜」って何事もなかったかのように晩飯誘いに来る神経がわからん。 美智子さんもニコニコ機嫌良く酌いでくれるし、まったく夫婦の仲というものもわからんね。 可愛い嬢ちゃんと三人家族、これが幸せかと思えばなにをか呪わん。 美智子さんにも陽子ちゃんにも恨みはない。お前が元凶である。 うっとうしいことこの上ない、と腹は満ちて心は寒々と帰途につくのである。 小さかった陽子ちゃんも、近頃はいい娘さんになった。 先だって会ったときは実に綺麗になっていた。美智子さんも相変わらず綺麗だった。 喪服は女性を綺麗に見せるというね。お前にも見せたかった。 ……そうだ。お前の葬式だった。 今ではかくも立派な、業界の重鎮となったお前の葬儀を俺が取り仕切ったんだった。 最後までお前に面倒かけられっぱなしだった。 俺は積年の思いを込めて、お前の悪事、お前の恥、ありとあらゆるみっともない話を 満場の列席者に暴露してやったんだ。みんな笑ってたなぁ。涙が出るほど笑ってたなぁ。 明日は四十九日、どうせお前のことだから時間も覚えてやしないんだろうけど、もう電話はよかったんだな。 世話もかけさせないなんて、お前らしくないことだ。 甲斐がなければ、俺もどんどん呆けるばっかりだよ、なあお前。 ----   [[もうどーでもいい>20-149]] ----

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