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寝込みを襲われたい ---- おかしい。 狸寝入りのベッドから、薄目を開けて横を見る。 俺に恋愛感情を抱いているという男が、小難しげな本を読みつつスルメを噛んでいる。 ここは俺の家で、2人とも程良く酔っていて、奴が惚れた相手は スヤスヤ眠っている(ように見える)。 正にゴールガラ空き据え膳状態と言えるだろう。 それを完全スルーとか、明らかに不自然だろどうなってんだ。 そんなに本が大事か、スルメが好きか。 心の中で毒づいていると、奴が立ち上がった。 慌ててしっかり目を閉じる。 こいつは、俺を好きだと言っていながら、全く手を出す気配がない。 それどころか、俺に何度 「お前になんか興味ない」 と言われようが顔色一つ変えない。 本当に好きな相手なら多少なりとも反応するだろうに、こいつは何なんだ。 実は真顔で冗談を言ってるのか。だとしたら振り回されるのも馬鹿らしい。 というわけで、今夜は奴の真意を確かめてやろうと、余裕のある内に奴の寝床を占拠して、 寝込みを襲うのにうってつけの環境を整えたのだ。 なのに、である。 やたら研ぎ澄まされた聴覚が拾ったのは、甘い言葉ではなくガチャガチャと空き缶を片付ける音。 そして奴が横になる気配と、独り言のような「おやすみー」の一言。 ――お前も寝るのかよ!! 全力で飛び起きてツッコミを入れたくなったが何とかこらえる。 しばらくすると、規則正しい寝息が聞こえてきた。 そろそろと目を開けると、奴はコートをかぶって床に丸まっていた。 何やってんだこいつ。俺を起こしたくなかったのか。 言われたら片付けだって手伝うし、布団くらい貸すし、 今ならベッドを半分使わせてやっても構わないと思っているのに。 仕方なく起き上がると、俺が使っていた布団をそっとかけてやる。 おかしい。 こいつが俺に惚れているのであって、俺はこいつには何の興味もない。決してない断じてない。 さっきから身体が熱いのは今更酔いが回ってきたからだろうし、 奴の寝顔から目が離せないのは単に動くのがだるいからに違いない。 募る違和感に、無性にむしゃくしゃしてきた。 お前俺に惚れてるんじゃなかったのか。 よっぽど枯れてるのかよっぽどヘタレなのか知らないが、 「……そっちから来ないならこっちから行くぞ?」 無意識に転げ落ちた言葉に、自分で驚く。 目の前の男は相変わらず穏やかな寝顔のまま。 「……このバカやろーが」 キスする瞬間、奴が満足げに笑った気がした。 ----   [[いたらいたでうざいけど、いなきゃいないで寂しい>20-139]] ----

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