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俺がおっさんと出会ったのは、両親の葬儀の直後だった。 世話をしてくれた叔母さんが帰り、一人、自室で放心していた俺の目の前で、押し入れからおっさんが出てきたのだ。 最初は泥棒かと思った。 叫び声も上げられずに呆然とおっさんを見ている俺に 「あれ?見えてる?」 おっさんは不釣り合いに可愛らしく小首をかしげてみせた。 「だから、座敷わらしだってば。」 「どこの世界に30台後半の座敷わらしが居るんだよ!!」 「…年齢は100歳越えてるよ?」 「そういう問題じゃねぇよ!見た目の問題だ!」 元座敷わらしだと言い張るおっさんは、一々動作が子供っぽく、可愛らしかった。見た目おっさんなのに。 「仕方ないじゃないか。座敷わらしは恋をすると成長し始めちゃうんだよ。」 「そんな珍説聞いたことないわ!…て、恋!?誰に?」 「…君…、の、お母さんに…」 「…マジすか…」 おっさんは「行く所ないから。」と、うちに居座った。 おっさんは俺以外の人間には見えなかったが、どういう原理か炊事や洗濯などの家事はできるようだったので、それを条件に同居を許した。 おっさんはよく、俺の知らない、新婚当初の両親の話を聞かせてくれた。 自分では覚えていない、俺の幼い頃のエピソードも。 いつしか俺はおっさんが待つ家に帰るのが、楽しみになった。 自分では覚えていない、俺の幼い頃のエピソードも。 いつしか俺はおっさんが待つ家に帰るのが、楽しみになった。 「…なあ、おっさん。思い出したんだけどさ」 「おっさん言うな!…何?」 「俺、小さい頃、おっさんに会ったことあるね?」 「うん。」 昨日、幼い頃の夢を見た。 小さい頃の俺は、押し入れの中に入って遊ぶのが日課だった。 干した布団の匂いが大好きだったからだ。と、思い込んでいた。 だが違った。 押し入れの中には、青年がいた。 いつもにこにこと優しそうに微笑んでいる"お兄ちゃん"がいた。 不思議なことに両親には見えない"お兄ちゃん"は、俺が押し入れに行くと嬉しそうに歓迎してくれ、お手玉やおはじきを教えてくれた。 そして俺が眠たくなると、いつも膝枕をして、子守唄を歌ってくれた。 「あれ、おっさんだよね?」 「…思い出したのか」 「膝枕、してくれる?」 おっさんは黙って正座した。 そして、自分の膝をポンポンと叩いて、誘うように微笑んだ。 ああ、この顔だ。 おっさんの膝にそっと頭を乗せる。 嗅ぎ慣れた匂いがした。 「俺の思い出の"押し入れの匂い"="おっさんの匂い"かよ…」 「悪かったね。夢を壊したかな。」 「いや、逃げ場がなくなった。」 俺がずっと、干したばかりの布団の匂いだと思い込んでいた、『大好きな匂い』。 「俺…おっさんが初恋の人だったわ…」 「小さい頃は、性別とか気にしないもんねぇ」 「今も好きなんだけど」 見上げると、おっさんが頬を真っ赤にして固まっていた。 悔しいが可愛い…おっさんの癖に。 「なぁ、約束、まだ有効?」 好きで好きで堪らなくて『けっこんして!!』と迫った小さな俺に、『大きくなったらね』と頬を染めて答えた"お兄ちゃん"。 俺を見下ろしている元座敷わらしは、小さくうなずいた。 ~後日談~ 「…本当は…君のことが好きになっちゃったんだ…」 成長し始めたきっかけは母ではなく実は俺だ、と言い出したおっさん。 「…俺とおっさんの見た目年齢を考えると…その頃、俺まだ乳児じゃない?  …おっさん、そういう趣味なの?」 「違うよ!魂がね!  …君の魂がすごく綺麗だったから!」 俺としては、今おっさんが俺のことを好きなら、きっかけは別にどうでも良かったが、 焦るおっさんが、残念なことに非常に可愛らしかったので、暫く黙っておくことにした。
押し入れの匂いのするおじさん受け ---- 俺がおっさんと出会ったのは、両親の葬儀の直後だった。 世話をしてくれた叔母さんが帰り、一人、自室で放心していた俺の目の前で、押し入れからおっさんが出てきたのだ。 最初は泥棒かと思った。 叫び声も上げられずに呆然とおっさんを見ている俺に 「あれ?見えてる?」 おっさんは不釣り合いに可愛らしく小首をかしげてみせた。 「だから、座敷わらしだってば。」 「どこの世界に30台後半の座敷わらしが居るんだよ!!」 「…年齢は100歳越えてるよ?」 「そういう問題じゃねぇよ!見た目の問題だ!」 元座敷わらしだと言い張るおっさんは、一々動作が子供っぽく、可愛らしかった。見た目おっさんなのに。 「仕方ないじゃないか。座敷わらしは恋をすると成長し始めちゃうんだよ。」 「そんな珍説聞いたことないわ!…て、恋!?誰に?」 「…君…、の、お母さんに…」 「…マジすか…」 おっさんは「行く所ないから。」と、うちに居座った。 おっさんは俺以外の人間には見えなかったが、どういう原理か炊事や洗濯などの家事はできるようだったので、それを条件に同居を許した。 おっさんはよく、俺の知らない、新婚当初の両親の話を聞かせてくれた。 自分では覚えていない、俺の幼い頃のエピソードも。 いつしか俺はおっさんが待つ家に帰るのが、楽しみになった。 自分では覚えていない、俺の幼い頃のエピソードも。 いつしか俺はおっさんが待つ家に帰るのが、楽しみになった。 「…なあ、おっさん。思い出したんだけどさ」 「おっさん言うな!…何?」 「俺、小さい頃、おっさんに会ったことあるね?」 「うん。」 昨日、幼い頃の夢を見た。 小さい頃の俺は、押し入れの中に入って遊ぶのが日課だった。 干した布団の匂いが大好きだったからだ。と、思い込んでいた。 だが違った。 押し入れの中には、青年がいた。 いつもにこにこと優しそうに微笑んでいる"お兄ちゃん"がいた。 不思議なことに両親には見えない"お兄ちゃん"は、俺が押し入れに行くと嬉しそうに歓迎してくれ、お手玉やおはじきを教えてくれた。 そして俺が眠たくなると、いつも膝枕をして、子守唄を歌ってくれた。 「あれ、おっさんだよね?」 「…思い出したのか」 「膝枕、してくれる?」 おっさんは黙って正座した。 そして、自分の膝をポンポンと叩いて、誘うように微笑んだ。 ああ、この顔だ。 おっさんの膝にそっと頭を乗せる。 嗅ぎ慣れた匂いがした。 「俺の思い出の"押し入れの匂い"="おっさんの匂い"かよ…」 「悪かったね。夢を壊したかな。」 「いや、逃げ場がなくなった。」 俺がずっと、干したばかりの布団の匂いだと思い込んでいた、『大好きな匂い』。 「俺…おっさんが初恋の人だったわ…」 「小さい頃は、性別とか気にしないもんねぇ」 「今も好きなんだけど」 見上げると、おっさんが頬を真っ赤にして固まっていた。 悔しいが可愛い…おっさんの癖に。 「なぁ、約束、まだ有効?」 好きで好きで堪らなくて『けっこんして!!』と迫った小さな俺に、『大きくなったらね』と頬を染めて答えた"お兄ちゃん"。 俺を見下ろしている元座敷わらしは、小さくうなずいた。 ~後日談~ 「…本当は…君のことが好きになっちゃったんだ…」 成長し始めたきっかけは母ではなく実は俺だ、と言い出したおっさん。 「…俺とおっさんの見た目年齢を考えると…その頃、俺まだ乳児じゃない?  …おっさん、そういう趣味なの?」 「違うよ!魂がね!  …君の魂がすごく綺麗だったから!」 俺としては、今おっさんが俺のことを好きなら、きっかけは別にどうでも良かったが、 焦るおっさんが、残念なことに非常に可愛らしかったので、暫く黙っておくことにした。

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