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夜間飛行 ---- 通りを歩いていると、誰かが「星」と呟いた。 思わず空を見上げると、信じられない量の星が見えた。 そして、見覚えのある星座を見つける。 ――― お前知ってるか? あれオリオン座なんやぞ? 耳に慣れた彼の言葉が聞こえた気がした。 『この前聞いた。それにしても、東京でこんなにくっきりと星が  見えるなんて、初めての経験だな。…お前のおかげか?』 俺は心の中で、そう答える。 彼のはにかんだような嬉しそうな笑顔が浮かびあがる。 あの会話をした時は、二人ともまだ田舎にいて。 夜中に家を抜け出して、田んぼしかない道のど真ん中で、バカみたいに星を 見て色々話していた。大きくなったら何をしよう、あれがしたい、これが したい、どこにいこう、どこかにいける。そんな会話をしていた。 おずおずと差し出された手。握りあった指。交わした体温。 昨日のことのように覚えているのに。 ――― こうして夜空ばっかり見てたら、飛んでるみたいに思えてけぇへん? 『銀河鉄道の夜?』 ――― あんなんみたいに悲しい結末じゃないよ。ピーターパンや。 『あれも別れるんやん』 ――― じゃぁ、俺がファビアンなら、お前はリビエールや。 『夜間飛行か。最悪やん。俺はずっとお前を胸に前に進まなきゃあかんのか』 ――― 当たり前やんか。 そう言って笑いあったお前の顔、いまだに鮮明に浮かび上がるのに。 なぜ俺は、お前の手を離してしまったのかな。 彼の魂が天に昇る日が、こんな星空で良かった。 今日は星も街の光も綺麗だから、寂しがりやのお前でも寂しくないだろう。 星空から視線をはずし、前へ進もうと一歩踏み出した。 目の前がにじんでぼやけていたけれど、俺は歩きだした。 後悔しても、何もかも遅い。せめて前へ行かなければ。 ----   [[×綺麗なニューハーフ ○ごっついオネエ>9-059]] ----

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