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一番星 ---- 俯いて白い息を吐く。 厚いマフラーに口元を埋め、ポケットに手を入れてもまだ寒い。 周囲は夕焼けで紅に染まり、足元には黒々とした影が長く伸びている。 目を上げれば、空には気の早い一番星。 『一番星って俺に似てるよな』 ふと、いつも傍らにいた男の声を思い出した。 『気が早すぎるところは似てるかもな』 『ひっでー!いいじゃねーか思い出作りにちょこっと手を出すぐらいー』 『…手術は一ヵ月後だな』 『ああ』 『だったら無事完治した後にでも、いくらでも出せばいいだろう。 …縁起でもない』 『うん、でも、何があるか分からないしな。…一番星はさ、満天の星空の 中では光は紛れてしまうけど、少し早く光り始めるからこそ人の目を引くよな。 俺は、お前の心に残れるのなら、そういうのでもいいと思っている』 『…』 『俺がこのまま居なくなったら、俺が残せるのはお前に初めて触れたぬくもりだと いう事実だけだ。 だからさ、』 『一番星を見たら俺を思い出せよ。少しは暖かくなるかもしれないぜ?』 「馬鹿だなあいつは」 西の空で輝く光も近くに無ければこんなにも冷たい。 ----   [[一番星>-909-1]] ----
一番星 ---- 俯いて白い息を吐く。 厚いマフラーに口元を埋め、ポケットに手を入れてもまだ寒い。 周囲は夕焼けで紅に染まり、足元には黒々とした影が長く伸びている。 目を上げれば、空には気の早い一番星。 『一番星って俺に似てるよな』 ふと、いつも傍らにいた男の声を思い出した。 『気が早すぎるところは似てるかもな』 『ひっでー!いいじゃねーか思い出作りにちょこっと手を出すぐらいー』 『…手術は一ヵ月後だな』 『ああ』 『だったら無事完治した後にでも、いくらでも出せばいいだろう。 …縁起でもない』 『うん、でも、何があるか分からないしな。…一番星はさ、満天の星空の 中では光は紛れてしまうけど、少し早く光り始めるからこそ人の目を引くよな。 俺は、お前の心に残れるのなら、そういうのでもいいと思っている』 『…』 『俺がこのまま居なくなったら、俺が残せるのはお前に初めて触れたぬくもりだと いう事実だけだ。 だからさ、』 『一番星を見たら俺を思い出せよ。少しは暖かくなるかもしれないぜ?』 「馬鹿だなあいつは」 西の空で輝く光も近くに無ければこんなにも冷たい。 ----   [[一番星>8-909-1]] ----

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