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さよならも出来ない ---- 八つ年上の大好きな隣のお兄ちゃん。 僕がものごごろついたときには、いつも膝に抱っこして絵本を読んでくれたり、 お仕事で忙しいママを待つ間、お風呂に入れて綺麗に身体洗ってくれてご飯食べさせてくれたり、 優しい大好きなお兄ちゃん。 なのになのに、ある日学校から帰ってお兄ちゃんちに行ったら… 鍵開いてるのにお兄ちゃんいなくて、おばちゃんもおじちゃんもいなくて、 玄関に沢山出しっぱなしだった靴は半分くらいになってて、 お部屋の中はいつも通りみたいなのによく見るといつもあったものが無くなってたり、 なんか1日しか経ってないのに何年も経っちゃったみたいな違和感があって。。 お兄ちゃん何処にいるの? なんか不安になって、僕は狂ったようにお兄ちゃんの部屋もベッドの下もお風呂もトイレも押入も探したんだ。 だけど、いない。 何日も何日も待ってたのにお兄ちゃんは帰ってこなかった。 ママがお兄ちゃんちのおじさんが借金取りがどうので一家でヨニゲしたって言ってた。 イヤだよ。僕が大きくなったらオヨメさんにしてくれるって言ったのに。 さよならも出来ないまま消えちゃうなんてひどいよ。 お兄ちゃん、お兄ちゃん、会いたいよ。 カーテンから漏れる眩しい光にまどろみを破られる。 あぁ夢か。はぁ、なんであんな昔の夢見たんだか。 昨日飲み過ぎたのがいけなかったのか、いやこいつと昔話なんぞをしたのが原因か。 身体を起こそうとすると、離れた人肌を探すように無意識に裸の身体を寄せてくる。 まだ心の奥に隠れて泣いている子供の俺に、 大丈夫だよそのうちきっと会えるから、と呟いて、 俺の腕にすっぽり収まり寝息をたてる「お兄ちゃん」をそっと抱きしめた。 今日は天気いいし、久しぶりに俺たちの生まれ育った街に思い出ドライブとでもいくか。 ----   [[嗜好の違い>8-899]] ----

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