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月と砂 ---- 砂漠の夜は、とても静かです。 行き交う商隊や旅人も、夜は出歩きません。 だからそこにあるのは、空の月と地上の砂粒くらい。 ……けれど、そのどちらも、互いの存在は知りませんでした。 月にとって砂粒は、小さすぎ、また低いところにありすぎましたし、 砂粒にとって月は、大きすぎ、また、高いところにありすぎました。 そんなわけで、彼らはどちらも、長い長い年月をたった一人ぽっちで過ごしておりました。 ある日のことです。砂粒が空を見上げてポツリと呟きました。 「……そういえば、あの丸いやつはいつも僕の上にいるんだな」 それは、砂粒にとって大きな発見でした。 砂粒は、とても小さいのでしょっちゅう風に攫われていろいろな場所に飛ばされてしまいます。 それなのに、彼はいつだって自分の真上にいるのです。これで、驚かないわけがありません。 「何だ何だ、あいつはよっぽど、僕のことを好きなんだろうか?」 一方そのころ、月も地上を見下げてポツリと呟きました。 「……そういえば、この茶色いのはいつも私の下に寝そべっている」 それは、月にとって大きな発見でした。 月は、とても忙しいので一日中様々な場所を旅して回ります。 それなのに、彼はいつだって自分の真下にいるのです。これで、驚かないわけがありません。 「何だろう、奴はよっぽど、俺に気づいて欲しがっているのだろうか?」 「なあ!」「おい」 二人が、相手に声をかけたのは同時でした。 何百年もの間ずっと一人だった彼らは、すぐ傍に友達がいたのを知ってすぐに仲良くなりました。 ……けれど二人はいつまでも、一つのことで喧嘩をします。 砂粒は、月がいつでも自分を追いかけてくるから、仕方なく話しかけてやったんだと言います。 月も、砂粒がしつこいくらいにくっついてくるから、仕方なく喋りかけてやったんだと言います。 お互い、先に好きになったのは相手だろうと主張して譲りません。 ……一体どちらが本当なのかは、誰も知らないことでしょう。 ----   [[ハリネズミのジレンマ>8-819]] ----

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