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訛りで攻める ---- 「何でそげん怒っとぉとや?わけわからん」 電話口から間延びした声が聞こえる。その声を聞いて余計に俺は苛立つ。 「知るか!てめーの胸に聞け!」 「聞いてもわからんけん聞きよっちゃろがぁ」 俺たちは今喧嘩をしてる筈だ。俺としては、声を聞いたら怒鳴ってしまうことが目に見えていたので 電話がかかってきた時点で取りたくもなかった。 「お前のそういうとこむかつく!ろくに考えてもねぇ癖に人にばっか聞きやがって」 「失礼かーおまえ。考えとるやろ、ほらこんなに。見えんとね?」 「電話で見えるかアホ!」 ああ、いつもこうだ。喧嘩をしている筈なのに、真剣な話をしているはずなのに、 緊張感がなくなるのはこいつの訛りの所為なんだ。 「見えんなら言うちゃーよ幾らでも。考えとるよ。何でおまえが怒っとるとか、ずっと。 一昨日からずっと頭ん中おまえで一杯。馬鹿みたいと思わん?」 「馬鹿みたいじゃない。馬鹿」 「馬鹿やもん。おまえを好きなのが馬鹿なら馬鹿でいい」 大嫌いだ。 緊張感をなくしてしまうこの響きが。とげとげの心を溶かしてしまう響きが。 「なぁ」 「…」 「好いとぉよ」 「……ばか」 ----   [[冷たい手>8-769]] ----

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