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嘘でもいい
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「ねぇ、愛してるとか言わないの?」
「嘘でもいいなら好きなだけ言ってやるよ。」
「・・・可愛くないね。リップサービスって言葉知ってる?」
「一回千円ね。」
「ちょっと、金取るの?それサービスじゃないよ・・・」
「俺はお前の望むままヤってやったじゃん。
SEXのあと愛してるって言ってほしいなんて聞いてない。」
「・・・あのね、貴方はもう身体売ってるわけじゃないだし、
僕に付いてきたってことはそれなりに好意があると思ってたんだけど・・・」
「もちろん、男娼から足を洗わせてくれたのはお前のおかげだけど、
そこに恋だの愛なんて感情が生まれるなんて俺は思わない。」
「・・・・・・哀しいよ、そんなの・・・」
「お前はあそこから抜け出すキッカケを与えてくれた。それには感謝してる。」
「僕と居て、楽しくない?少しでも僕を考えたことはない?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「僕はね、貴方が好きなんだよ。だからどうしても辞めて欲しかった。
ちょっと強引だったかもしれないけど、今一緒に暮らしてることがずごく嬉しいんだ。
だからきっと・・・愛してるなんて言われたらさ・・・」
「嬉しい?」
「うん・・・きっと嘘だと分かってても喜んじゃうと思う。もうしょうがないんだ、こればっかりはさ・・・」
「なんで、分かってるのに許せるの?」
「愛してるから。たとえ貴方が愛を知らなくても・・・」
「バカじゃん、そんなの。結局弄ばれてるだけじゃん・・・」
「うん・・・」
「愛してる。」
「うん・・・ありがとう。」
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[[夢見る頃をすぎても>8-499]]
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嘘でもいい
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あぁ。なんであんなヤツのこと好きなんだろう。
軽いし、嘘つきだし、時間にルーズだ。
今日だって、あいつから誘ってきたくせにもう30分以上、遅刻してる。
遅れるならメールのひとつ位入れやがれ!
ありえない。本当に。
今日はおれの誕生日で、いつも通りなら家族で外食のはずだった。
でも、この年にもなって誕生日に家族で外食なんてダサいかなって思ったし、
なによりあいつが、この日に遊ばないかって言ってきたから……。
まぁ、あいつがおれの誕生日なんて知るわけないし。それでも、嬉しかったんだけど。
あーあ。
おれはみじめな気持ちでおろしたてのブーツのつま先を見つめた。
「いやぁ。遅れてマジごめん。」
軽く叩かれた肩。振り返ると、悪びれない笑顔のヤツがいた。
「……」
怒りのあまり、おれはリアクションもできない。
「いやぁ、おばあさんがペットボトルの大群に襲われててさぁ。」
こいつのこういうところには殺意すら覚える。
「……嘘つくなら、もうちょっとマシなのにしろよ。」
「うん。そうだね。」
その時、突然首のまわりにあったかい感触がした。で、目の前に突き出された花束。
「このマフラー、おまえに似合うなぁ。って思って。はい花も。誕生日おめでとう。」
そしてひときわ声を潜めて、耳元を掠めるようにヤツは言った。
「好きだよ。」
こいつのすること、言うことのどこまでが本当で、どこからが嘘なんだろう。
あぁ。でも、もう。嘘でもいいや。
こみ上げてくる涙が、悔し涙か、嬉し涙なのか、呆れからくるものなのかもわからずに、おれはそう思った。
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[[嘘でもいい>8-489-1]]
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