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同じ月を眺めている
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眠れない。
自分の眠りがこんなにも浅かったのだと忘れていた。
いつも、アイツがいたから。
アイツの気配はいつだって心地よかった。
寒い季節、隣の温もりは自分を眠りに誘った。
いつだって一緒に夢を見た。
あの日までは。
いつもと同じようにアイツの横で眠りに落ちた。
けれど、何だかいつもとは違って。
顔に近づく気配にうっすらと目を開けた。
そして、唇に触れる何か。
目があった瞬間、アイツはビクリと体をこわばらせた。
何も言わずにアイツが立ち去った後で、ようやくキスだとわかった。
その日を最後にアイツはいなくなった。
アイツといるときはほとんど見ることのなかった月。
今は満ち欠けが追える程だ。
この月に願いが届けばいいのに。
アイツに、願いが届けばいいのに。
あの日、最後だと思って彼に触れた。
拒絶されるのが嫌で、卑怯にも眠る彼の唇に。
けれど彼は目を覚ました。
見開かれた目が嫌悪をしめすのを見たくなくて目を反らした。
拒絶の言葉聞きたくなくて逃げた。
もう会えないのに。
彼を巻き込む事はできないから。
ここからは俺の戦い。
自己満足と言われても、彼を危険に近づけたくなかった。
傍にいたいなんて言えない。
幸せにしたいなんて言えない。
寂しいなんて、言えない。
せめて彼が。
オレの傍でしか眠らなかった彼がこの月を見ていないといい。
願わくば、夢で会えたら。
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[[年上ドジっ子>8-429]]
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