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指先が掠めた
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触りたい。
けど、触れてしまえば、
ふたりの関係性は今までとまったく違うものになってしまう。
頭ではそう考えるのに、震える指先はゆっくりと、ごく、ゆっくりとしたスピードで、
綺麗な色の唇に近づいていく。
(だめだ)
(やめなくちゃ)
(何、してるんだろう)
そんな言葉がぐるぐると頭を巡っている間にも、指は唇に触れそうになる。
「ん…」
自分の気配に気づいたのか、彼が微かに身じろぎして、寝返りを打った。
途端。
引っ込めかけた指先と、唇が一瞬、掠める。
(……え、)
(柔らかかった?)
(分かんない、分かんないよ)
すでに何が分からないかも分からずに、指先に微かに残った感触に、
ただ、泣きそうになりながら立ち尽くしていた。
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[[悲しい夜明け>8-359]]
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