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一日違いの誕生日 ---- 『なんかさぁ、プレゼントとかってめんどくさいからいらなくねぇ? 』 そんな事を言って彼が笑ったのは1ヵ月前の今日。 『どうせ貰った翌日には返すんだからさ』なんて、 笑ってみても自分に遠慮しているのは分かっている。 去年まではやり取りしていたのに、急にいらないなんて言い出したのは、 最近仕事に忙殺されて、帰宅さえままならない自分を気遣っての言葉だった。 日付も変わって、周囲は寝静まった深夜。 手ぶらで彼の待つマンションのドアを開ける。 せっかくの誕生日を1人ですごす羽目になった彼は、 だらけた猫のように、しなやかな体をソファに伸ばして、1人ビールを飲んでいた。 「おぉ、お帰りぃ~」 手にした缶ビールをテーブルに置いて、彼の視線は自分の空の両手を確認する。 自分でいらないと言っておいて、あからさまにがっかりするガキっぽさに思わず笑った。 無言のまま近づくと、こちらの真意を伺うような真っ直ぐな視線に射抜かれる。 彼の飲みかけのビールを手にすれば、それはもうすっかりぬるくなっていて、 自分の帰宅を待つ、彼の寂しさを思わせた。 ぬるいアルコールを一気に干して、ソファに伸びたままの彼の上に覆いかぶさって、キス。 啄ばむ隙間から、安堵のような吐息が漏れて、わずかに目を開いてみれば、 彼もまた、真っ直ぐな視線を向けていた。 「……あんたが帰ってきたから、それでいいや……」 本当はちょっとは期待していたらしい。 明日……いや、もう今日だ。 自分の誕生日は、彼へのプレゼント選びの日になりそうだ……それもまた悪くない。 ----   [[一日違いの誕生日>8-219-1]] ----

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