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ロボット×人間 ---- 「愛してる」 「…・・・うん」 彼はそう頷くだけで、決して「僕も」とは言わない。言わなくなってしまった。 しかし私は構わず優しく彼を抱き締め、唇を合わせる。 初めてそうした時から少しも変わらないと自覚する動きで、丁寧に彼を愛していく。 それ以外に、私に出来ることはないからだ。 私は彼から愛されなくなってしまった。 初めは違っていた。彼は私を見て涙を流し、深く愛した。私の中にいる『彼』を。 私もそれが嬉しかった。そうプログラムされているから。 しかし何時からか、彼は心を閉ざし始めた。徐々に私を拒絶しだした。 理由は分かっている。私には『魂』がないからだ。言いはしないが、それはよく伝わってくる。 所詮私は『彼』のイミテーションなのだ。 いくら表層が同一であろうとも、中には何も入っていない。それが分かってしまったのだろう。 今や彼は私の愛撫を受けようとも、いつも辛そうな顔をしていた。 私にもし『魂』があれば、彼の心にある傷を完璧に埋めることが出来るのだろうか。 しかし魂が宿った時点で、もう私は『彼』ではなくなってしまうだろう。 そうなってしまえば、今のように、形だけでも愛することさえ許されなくなるかもしれない。 彼が望んだのは恋人の幻影なのだから。それ以外は求めていないのだ。 今、私はどうしたらいいのか分からない。空虚な私には解決することの出来ない問題だった。 ただ、彼が苦しんでいるのがつらい。もう見ていたくない。 『魂』さえあれば――たとえ彼から離れることになっても、彼の痛みを無くすことが出来るようになるかもしれない。 愛されなくてもいい。抱き締められなくなっていもいい。だからどうか、私に『魂』を―― 「愛してる」 そう囁かれるたびに、僕は戸惑う。頷くのが精一杯だ。 彼はそんな僕を見ても気にせず、いつものように触れてくる。 いつものように。しかし『以前』とは少し違う。違ってきている。僕はそれが怖い。 初めて彼がやって来た時、僕は泣いた。彼は『彼』そのものだった。 声も、顔も、性格も、なにもかも。喪失に引き裂かれそうになっていた僕は、彼に全てを委ねた。 だが――いつからだろう。彼が『彼』ではなくなってきたのは。 何もかも同じなはずなのに、ふとした瞬間、彼の中に『彼』ではない、別の人間を見てしまう。 人間……? ありえない、と製作者は笑った。彼には『魂』がない、だから変わることなどありえない。 けれど僕は確かに感じる。 そしてそれは、決して不愉快なものではないのだ。僕はそう感じてしまう自分が恐ろしい。 『彼』のことを愛していた。そしてこれからも愛し続ける。そのための彼だったはずなのに、 今では、ただ彼がいることを許してしまっている。彼の中に『彼』を求めなくなっている自分がいる。 いつか、彼が「自分には『魂』がある」と言い出したら、僕はどうするだろう。 僕はその時を恐れ――同時に望んでいる。 ----   [[ヘタレ攻めと健気受け>1-949]] ----

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