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狼×犬 ---- 俺のいる動物園は、もう閉園が決まっていた。 まあ、仕方がない。象もライオンもパンダもいない、しょぼい動物園だものな。 けど、そんなここにも一応目玉ってやつがいて、それが俺、オオカミ様ってわけだ。 遠足に来たガキなんかは、俺を見て「こわい」なんて言いやがる。 そう言われると、俺もいい気になるんで、大声で吼えてみたりしてやるんだ。 ところで最近、誰もいない深夜に俺の檻の前に野良犬がやってくるんだよ。 小さくてふわふわした茶色いヤツで、これで本当に俺達の仲間なのかって思う。 そりゃ俺も、はじめのうちは吼えたり牙を見せたりして、怖がらせようとしたよ。 でも、全然びびらねえんだ。むしろ、俺の声を聞いて楽しそうにしてやがる。 で、むかついた俺はそいつに聞いてみたんだ。 俺が怖くないのかって。 そうしたらさ、そいつは笑って「おじさんの声、父さんに似てるんだ」って答えた そいつのオヤジは『大きな車に乗った白い服の人間』に捕まって、どこかに連れて行かれたんだって。 だからそいつは、そのオヤジを探して、色々歩き回ってるらしい。 俺は言ったね。「じゃあ、見つかるまでは俺がオヤジの代わりをしてやるよ」 …ああ、言うなよ、分かってるんだって。 俺はもうすぐ他の動物園に売られちまうんだからな。 こいつといてやれるのも、あと一週間ってとこよ。 …だけど、だけどさ、その間だけは、せめてあいつの望むだけ吼えてやっても…構わないだろ? ----   [[たまねぎ×長ねぎ>1-419]] ----

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