「6-749」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

6-749」(2011/04/20 (水) 16:25:05) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

山手線 ---- 金もない学生だった頃 似た者同士の俺達は、良く山手線に乗った お互い狭い実家から学校通いで、今時珍しい四人兄弟 俺は兄貴と妹二人 あいつは姉貴と弟と年の離れた妹 家は寝食に帰るだけの場所だった。 『どっか行きたいけど金ねぇな』 バイトの休みがかち合うと、どちらからともなく言い出して、決まって俺達は山手線に乗った 取り立ててあれこれ喋る訳でもなく ひたすら、ただ隣りに並んで有効時間いっぱい環状線の電車に揺られていた 俺が眠っていたり、あいつは本を読んでいたり 時には逆だったり、駅名を暗記してみたり、ぼんやりしていたり 今考えてみると、何て時間の使い方をしていたんだろうな ある日 卒業を間近にした俺達は 最後だからと耐久山手線乗車チャレンジなんてした わざわざ始発駅まで行って、始発からスタートして 約四年間の事を思い出して、初めてそれまでになく他愛もない話を沢山した けれど終電で降りたら、地味に体中は悲鳴を上げて 駅案内のアナウンスなんか二度と聞きたくないな、と勝手な文句を言って 俺達バカだな、と顔を見合わせて笑ったっけ あれから数年、Tシャツとジーンズとスニーカーはスーツと革靴に変わって 一人暮らしを始めて住まいも沿線も変わった俺は、山手線に乗ることもなくなった けれどたまに思い出す それじゃ卒業式で、と 笑顔で手を振って別れたあいつの姿を 最後に山手線に乗った時 あいつは隣りにいなかった ----   [[ヤクザとその幼なじみの堅気>6-759]] ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: