「6-629-1」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

6-629-1」(2020/03/25 (水) 23:18:14) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

さぁ俺を踏み越えて行くが良い ---- どうしてこうなったのだろうと、考えるのはやめにした。 考え方の違いは出会った時からわかっていて、それでも互いに手を伸ばしあった、 その過去は決して変わらない。 七年も前に袂を分ったからといって、今、敵軍の将として遭い見えたからといって、 貪るように抱き合ったあの日の想いに嘘などない。 たとえ、互いに遠慮容赦ない戦いを繰り広げようとも。 たとえ、今この瞬間に、お前の剣が俺を切り裂こうとも。 わざわざ跪いて、倒れ伏した俺を哀しげに見つめなくたって、いいんだ。 一軍の将たるものが、そんな様でどうする。 「―――…に、してやがる…」 どうにも掠れる声を振り絞る。情けないほどに弱々しいが、こいつに聴こえればそれでお十分だ。 「さっさと、行け…!」 さぁ、俺を踏み越えて行くがいい。お前ならきっとどこまでだって行けるから。 俺の信念も忠誠も今の国を守りたいという願いも全て、お前の心には届いているだろう。 それこそ、七年前から、ずっと。 そんなお前だからこそ、辿り着ける未来もあるだろう。 「―――」 すぅっと息を吸う気配を感じて、目線を上げる。睨み付ける。 謝罪の言葉を紡ごうものなら、死んで後でも刃を取ると、そう瞳で突き放す。 踏み越えるとはそういうことだと、ほんの少しでも楽になることなど許されないのだと、 見開かれた懐かしい双眸がやがて細まり、そして最後に、まっすぐにこちらを射抜いた。 今この国に必要なものが何か、夜が明けるまで語り合った頃の、迷いのないそれを 思い出させる眼差し。記憶より重みが見て取れるのは、気のせいなんかじゃない。 ―――…それでいい。 上がらない口の端の代わりに、瞼を伏せた。 立ち上がる気配がし、間もなく響き出した足音が、遠ざかり、おぼろげになり……消えた。 ----   [[喪服を脱ぐ時>6-639]] ----
さぁ俺を踏み越えて行くが良い ---- どうしてこうなったのだろうと、考えるのはやめにした。 考え方の違いは出会った時からわかっていて、それでも互いに手を伸ばしあった、 その過去は決して変わらない。 七年も前に袂を分ったからといって、今、敵軍の将として遭い見えたからといって、 貪るように抱き合ったあの日の想いに嘘などない。 たとえ、互いに遠慮容赦ない戦いを繰り広げようとも。 たとえ、今この瞬間に、お前の剣が俺を切り裂こうとも。 わざわざ跪いて、倒れ伏した俺を哀しげに見つめなくたって、いいんだ。 一軍の将たるものが、そんな様でどうする。 「―――…に、してやがる…」 どうにも掠れる声を振り絞る。情けないほどに弱々しいが、こいつに聴こえればそれで十分だ。 「さっさと、行け…!」 さぁ、俺を踏み越えて行くがいい。お前ならきっとどこまでだって行けるから。 俺の信念も忠誠も今の国を守りたいという願いも全て、お前の心には届いているだろう。 それこそ、七年前から、ずっと。 そんなお前だからこそ、辿り着ける未来もあるだろう。 「―――」 すぅっと息を吸う気配を感じて、目線を上げる。睨み付ける。 謝罪の言葉を紡ごうものなら、死んで後でも刃を取ると、そう瞳で突き放す。 踏み越えるとはそういうことだと、ほんの少しでも楽になることなど許されないのだと。 見開かれた懐かしい双眸がやがて細まり、そして最後に、まっすぐにこちらを射抜いた。 今この国に必要なものが何か、夜が明けるまで語り合った頃の、迷いのないそれを 思い出させる眼差し。記憶より重みが見て取れるのは、気のせいなんかじゃない。 ―――…それでいい。 上がらない口の端の代わりに、瞼を伏せた。 立ち上がる気配がし、間もなく響き出した足音が、遠ざかり、おぼろげになり……消えた。 ----   [[喪服を脱ぐ時>6-639]] ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: