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アメフラシとてるてる坊主
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うねうねと雲が踊っている。雨雲はそのまんまアメフラシみたい。
暗くなったせいで軟体感を増す空を見上げて、帰ろ、と決めて傘を探した。
馬鹿馬鹿しい。何時間もあいつを待ったりしてホント馬鹿だ。
「今日こそは一緒に帰る!」と言い切ったあいつ。
「イヤ、待つの俺だし。夏前だろ?何時間練習するのさ?」
と聞く俺に、
「今日はミーティングだけだから」と言った。
そうなのかと思った俺も馬鹿だけどね?夏大会前の野球部がミーティングのみで終わるはずもないんだよな。
あぁ、降って来そうだな。今土砂降りになったら野球部も練習終わるのかな。
今情けない顔してるから、あんまり見られたくないな。
ロッカーの奥から折り畳み傘を引っ張り出して、開いてみる。空気は湿っているのに埃が舞って、咳と一緒に涙が出た。
あ、やべ。今から傘置いて帰ったら、泣いてるのバレないかな。
俺の心の中みたいな重い空が泣き出そうとしている。カバンを取って帰ろうとしたら、机の上にあったはずのカバンが無かった。
教室のドアのところに、ユニフォームのままのあいつが俺のカバンを持って笑っている。
「帰ろーぜ」
むしろ腹が立った。
「お前、サイアク」
「うん、ごめんな」
「お前なんか最悪だ・・・」
「うん、ごめん」
最悪なのは、顔見ただけで晴れてゆく俺の心の方。
声だけはすまなそうに、しかし笑顔なお前はてるてる坊主みたい。
空が泣き出した。
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[[アメフラシとてるてる坊主>6-499-2]]
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