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βエンドルフィン
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――君といるとどきどきします。
「きっとさ、β-エンドルフィンが分泌されてってやつだよね」
ふたりでぼんやり、いつものように時間を過ごす。見たかったテレビドラマも終わったので、
僕はふと隣の男に話題を振った。
「だから俺、お前と一緒にいたりエッチしたりすると幸せなんだ」
すると、ソファの上でだらしなくくつろいでいるそいつは、僕の方を見もせずにへぇボタンを
押す仕草だけをしてみせた。
「へぇへぇ。2へぇ」
「微妙にふりぃよ」
「微妙なのかよ」
「やっぱ大分古い。まあそれはともかく、β-エンドルフィンですよ、β-エンドルフィン」
「ベタ・エンゼルフィッシュね。金魚でも飼うの?」
「せめて熱帯魚って言えよ」
「べーた…べた…煙突……やっぱおれギャグのセンスないのかも」
ああ、聞いてて悲しくなってきた。そこまで寒いともう一つの才能だ。
僕が「今更気づいたわけ?」とおちょくると、「言ってみただけなわけ。んなもん小学生の
ころから知っとるわ」と帰ってきた。いや、自覚してるって知ってるけど。僕も聞いてみただけ。
「で、何でβ-エンドルフィン?」
「いや、こないだうちの妹が授業で習ったって」
「ふーん」
「脳内麻薬でモルヒネで痛み止めらしい」
「何じゃそれ」
食いつきの悪いやつめ。人付き合いも悪いやつめ。うん、まあそんな君も好きですけど。
「で、で、好きなこととか嬉しいことがあると分泌されるらしいのね」
「うん」
「ほら、俺の趣味は僕の目の前のあなたです!から」
びしぃっと人差し指を突きつけてやったら、特に感じ入った様子もなくあくびをひとつ返された。
ちょっとムカツク。うん、まあそんな君も好(ry
「はいはい。ありがとうありがとう」
「えー、つまんねーなー、前はもっと照れてくれたのに」
「つるんで4年目になるのにいちいち照れてられないから」
「あっそう。別にいいけど」
「まあつまりあれだよ、あれ」
「どれ」
「たとえばーきみがいるだーけでこころがー。…はいっ」
「つよくなれるーことー」
「なによりーたいせつなもーのを、…続きは?」
「きづかせーてくれたねー。これでいい?」
「うん、いい。つまりそういうことなのよ。オーケー?」
つまり、毎日こうして馬鹿馬鹿しい話をしたり、じゃれあったり。君がいるだけで、そういうことが幸せなわけだ。
エンドルフィンだのアドレナリンだの、むつかしいことはよく分かんないけど、まあそういうことだろう。
そして君は笑って言う。
「オーケー」
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[[βエンドルフィン>6-409-2]]
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