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最後のメール ---- 『別れたい。』 恋人からの突然の別れ。 なぜこんなことを言うのか・・・ それすら分からず、部屋の中に立ちすくむ。 理由を聞くことすら阻む、決定的な四文字。 電話することが震えて出来なかった・・・ 彼はいつでも俺を喜ばす言葉をメールで言う。 たとえば、デートの予定とか。 たとえば、好きとか愛してるとか。 俺だってまぁメールするけど、圧倒的に電話することが多かった。 彼にも、たまには電話しろとよく言った。 俺は感情が見え隠れする彼の声が聞きたかった。 だからメールは嫌いだった。 メールだと一切の感情を消してしまう気がするから。 それ故に、『別れたい。』の四文字が今、一層と際立った。 未だ立ち尽くしたままの俺はそれを感じて携帯を閉じた。 ----   [[最後のメール>6-369-2]] ----
最後のメール ---- いつもどおり、今日も日が暮れる。おれはそれを、ぼろアパートの二階からぼんやり眺めている。 こんな暇な時間を過ごせるほど経済的余裕はないけれど、でも、この時間は仕方ない。 だってあいつが来るから。 頼んでもいないのに、いつもいつもコンビニ袋に二人分の食料を詰め込んで。 へらへら笑って、ドアからひょっこり現れるのだ。 やかましいし、うっとうしいし、酒癖も悪いし、ちょっとうざいやつ。 だけどあの顔を見るたび、一日の鬱々とした気持ちが嘘みたいに晴れていく。 そしてそれが、とても、とても嬉しい。……若干餌付けされてる気もしないでもないけど。 かれが会いに来てくれることが、おれの一日の中で一番の楽しみだった。 ところが、その男が来るのが、今日はどうも遅い。 来ないなら来ないでいつもはうっとうしいくらいがっかりメールをくれるはずだけど、 それを忘れてるんだろうか。 連絡でもつけてみようかと、携帯電話を開いた。 『今日の夕飯どーする?』 実に一時間も前の着信だった。一時間も気づかなかったとは、さすが。自慢にならない。 『たまには作ってやるから早く来い。待ってるよ』 送信ボタンを押して、携帯をすぐ閉じる。 どうせ会社でポカやらかして、残業でもしてるんだろう。あいつはあほっぽく見えて、本当に あほだから。大学生のころから、ちっとも変わりやしない。 だからきっと、今も携帯電話を見てないんだろう。さっきのおれみたいに。 せっかく料理してやるって言ってるんだから、早く来ればいいのに。 こんなに待ってるんだから、早く来ればいいのに。 早く、早く来ればいいのに。 ----   [[最後のメール>6-369-2]] ----

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