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最後のメール
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『今日の夕飯どーする?』
いつもどおりに空はくすんでいて、いつもどおり町は無駄に賑やかで、
僕はいつもどおりくたくたで帰り道を行き、いつもと同じようにかれにメールを打つ。
当たり前で、ありふれた一日の終わり。
自分の家に帰る前に、僕は一人暮らしのかれのアパートに寄っていく。
赤貧イモ洗いなやつなので、弁当や、バーガーや、時には酒とつまみを差し入れにして。
それはかれに初めてであった、大学時代からの習慣だ。
大事なひと。大好きなひと。いやなことがあっても、かれに会えば全部吹っ飛ぶ。
かれに会いに行くことが、僕の一日のなかで一番の楽しみだった。
メールの返事を待つことなんてなしに、僕はコンビニで弁当をふたつと缶ビールを五本買った。
僕の分が二本、呑んべえのあいつには三本。アルコールの差し入れは珍しいから、きっと喜ぶだろう。
(今日は何を話そう)
(そういえばあいつが楽しみにしてたドラマ今日からだ)
(待っててくれるかな)
そんなことを考えて、僕は大人気なく小走りになってアパートを目指す。ポケットの中で、
部屋の合鍵がちゃりちゃりと鳴る。
曲がり角の向こうではバイクが全力疾走していたけれど、ブロック塀に遮られて僕には見えない。
――それがさいごのメールになるなんて、だから僕は、そのとき思いもしなかった。
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[[最後のメール>6-369-1]]
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