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笑わない人 ---- 君の笑顔が見たい。 それだけが僕の望みだった。 君は何故だか僕にだけ笑顔を向けてくれなかった。 切れ長の瞳に宿る冷ややかな視線。他の人間にならば、よく喋り朗らかに笑う魅惑的な唇も、頑なに閉ざされたまま。 僕が君の目の前に立っても、君は僕から目を逸らし、まるで僕など傍にいないかのようにふるまう。 その冷たさに、どうしてなのだろうと悲しい気持ちを抱えたまま、それでも僕は君になんでもしてあげたかった。 防音の行き届いた広いマンション。寝心地のいい豪華なベッド。 有名レストランのケータリングは間違いなく美味しかったし、君が読みたがっていた洋書もほら、取り寄せたんだ。 退屈しないように揃えたゲームもパソコンも、好きに使っていいんだよ。 この部屋にある物は全部、君のためだけに揃えたんだから。 金任せかと君は言うかもしれないけれど、それでも僕は君に笑ってほしいんだ。 ほんの少しでもいい。 いつも僕を蔑むようにしか見ない君が、楽しそうに笑ってくれたなら。 「だったらこれを外してくれ」 じゃらりと音を鳴らして、君が左腕をもどかしげに揺らした。 そこには君を拘束する、太くて頑丈な鎖がベッドと君を繋いでいる。 なんだか君は少し痩せたみたいだ。 最初の頃は手首にしっかりと嵌っていた枷が、今は少し緩んで肘の方へと落ちている。 あんなに美味しい食事を毎食用意させているのに、どうしてなのか君はいつもあまり食べたがらない。そのせいだ。 「そんなこと、できるわけないだろ」 「どうして!」 またそんな顔で僕を見る。 絶望的とすら言える表情で君は叫んだ。 それは絶叫だったのかもしれない。 そんな声が聞きたいわけじゃないのに、どうして君は解ってくれないんだろう。 「…だって君はいつ笑ってくれるか解らない」 もしかして僕に向けられるのは、生涯ただ一度かもしれないその笑顔を、見逃すわけにはいかないんだ。 そうだろう? 偽者なんていらない。 君が本当に、心の底からの笑顔を僕に向けてくれる瞬間を待っているんだ。 こうしてただ、君の傍で。 ----   [[殺して?>6-179]] ----

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