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「絶対に許せないんだ」 彼は言った。 「君なら魔王を倒せるかもしれないね」 町人に化けていた私は 顔だけは優しげに微笑んで、心にもない返事をしたものだった。 瞳の強い輝きが印象的な、心根のまっすぐな少年であったが、 その義憤や志が果たしていつまで持つものか。 そう思っていた。 実際、愚かで浅慮なたくさんの少年が私を目指したが、 大半は旅に出る事もなく、日々の生活に流されて大人になってゆき また旅に出たものも、ある者は城に辿り着く前に力尽き ある者は故郷に逃げ帰った。 城の中に客人を迎えるのは、だから本当に久しぶりだ。 水晶に手をかざすと、一心に剣を振るう彼が見えた。 大分背が伸びて大人びてはいたが、強い瞳の光に衰えはなく その眼光に射抜かれたとき 震えるような喜びが、私の身の内に満ちた。 私が与えたどんな困難も妨害も、彼の光を打ち消すことはできず そうして今、彼は私の前に立とうとしている。 恋をした娘のように胸が高鳴る。 こんな興奮は、魔王として君臨してからも、人間だったときでさえなかったように思う。 早く君に会いたい。 君の息の根を止め、魂ごと自分のものにしたい。 君の剣をこの身に受け、喜びの中で息絶えたい。 城の最深部に位置する、この玉座の間まではまだ遠い。 早く、早く、早くおいで。ここにおいで。私の懐に。
悪に立ち向かう少年 ---- 「絶対に許せないんだ」 彼は言った。 「君なら魔王を倒せるかもしれないね」 町人に化けていた私は 顔だけは優しげに微笑んで、心にもない返事をしたものだった。 瞳の強い輝きが印象的な、心根のまっすぐな少年であったが、 その義憤や志が果たしていつまで持つものか。 そう思っていた。 実際、愚かで浅慮なたくさんの少年が私を目指したが、 大半は旅に出る事もなく、日々の生活に流されて大人になってゆき また旅に出たものも、ある者は城に辿り着く前に力尽き ある者は故郷に逃げ帰った。 城の中に客人を迎えるのは、だから本当に久しぶりだ。 水晶に手をかざすと、一心に剣を振るう彼が見えた。 大分背が伸びて大人びてはいたが、強い瞳の光に衰えはなく その眼光に射抜かれたとき 震えるような喜びが、私の身の内に満ちた。 私が与えたどんな困難も妨害も、彼の光を打ち消すことはできず そうして今、彼は私の前に立とうとしている。 恋をした娘のように胸が高鳴る。 こんな興奮は、魔王として君臨してからも、人間だったときでさえなかったように思う。 早く君に会いたい。 君の息の根を止め、魂ごと自分のものにしたい。 君の剣をこの身に受け、喜びの中で息絶えたい。 城の最深部に位置する、この玉座の間まではまだ遠い。 早く、早く、早くおいで。ここにおいで。私の懐に。

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