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その瞳に映るもの ---- あいつはよく哀しそうな顔をして俺に言う。 今の世の中が辛い、と。 欲望、混沌、狂気。 そんなものに染められた現代社会が、耐え難いほど辛いと。 ――人は人としての生き方を、なくしちゃったのかもしれないね。― あいつの何気ない一言が、いまだに俺の胸に突き刺さっている。 『人としての生き方をなくす』というのは、俺の事も指しているのだろうか。 人が恋心を抱く相手は、普通は異性と決まっている。 そうでなければ、人は子孫を遺す事ができないから。 同姓であるこいつを愛した俺は、こいつがいう所の『人としての生き方をなくした』人なのかもしれない。 こいつの瞳は、同姓を愛した俺をどう映すのか。 そんな事はこいつに聞いて見なければ分からないが、聞く勇気は俺にはない。 俺と同じく同姓を愛した自分に対する自嘲の言葉だったなんて、そのときの俺には分かるはずもなかった。 ----   [[ヒトメボレ×ヒトデナシ>7-619]] ----

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