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今年の紫陽花は何故か青い ---- 死にネタ注意 ―――――――――――――――――――――――― 「おお、綺麗に晴れたなあ!」 若旦那が太陽と一緒に笑いながら庭へ出てきた。 しばらく雨続きで出られなかったから嬉しいのだろう。 下駄をころころ鳴らし、機嫌よく庭の植木を見て廻る。 「うん、皆元気そうだ。お前の様な腕のいい庭師を雇えて俺は幸せもんだなあ。  で、これはなんてえ木だい? みかんか? 柿か?」 「みかんも柿もこの庭には植わってませんよ…」 「何ぞ実がなるモンは無いのかい。楽しみがないよ楽しみが」 「大旦那が虫が寄るからと言って嫌ってらっしゃいますからね。さ、薬を撒きますよ」 ひゃいひゃいと子どもの様にはしゃぎたて、若旦那は口元を押さえて逃げ出す。 少しユルいとは思うが、こんなに喜んでくれるならば庭師冥利に尽きるというものだ。 「これは知ってる。紫陽花、だ」 撒いたばかりの露を弾き、若旦那は紫陽花を指差して笑った。 「でも、今年の紫陽花は何故か青いな。去年は赤だったのに色が変わってる」 「赤いのがお好みですか?」 「……いや、今年は俺の親友が長い長い旅へたった。  紫陽花もそれを悲しんでるんだろ。やつもこの庭が大好きだったからな」 そういって土を少し握り、口元へ一度やると撒きながら部屋へと戻っていった。 ――薬を撒いたんです、若旦那。 虫が、俺の大事な木に虫がつきそうだったから。 食い荒らされるくらいなら俺は毎夜悪夢にうなされても良い。 目が覚めれば可愛い木の愛らしい笑顔が見られるから。 俺は眉を寄せて、土からはみ出た虫と着物の袖を埋めなおした。 ---- [[今年の紫陽花は何故か青い>7-149-2]] ----

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