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また、明日 ---- 夕日が遠くて、朱すぎて目が痛くなった。 沈む太陽を背に、もう一度奴は投球フォームに入る。スローなその動作の最中、ズバンと音を立ててボールが俺のミットに納まった。 慣れてるとは言え、もう何時間。いい加減手が痛い。 目が痛いのも、見えにくくなったボールのために目を凝らしたせいだと気がついた。 俺の返したボールを受けて、奴がまたフォームに入る。もうちょと、か。 腰を落として構えた俺に、奴は少し妙な顔をした。振り上げた腕を下ろす。 「?どうした?」 「いや、いい。・・・今日はもう止めとこう」 「何言ってんだ。夏のレギュラーの発表までそんなに間はないぞ。 ベンチ、入りたいんだろ?」 「いいんだ、今日は。もう帰ろう」 言いながら、奴は俺の横をすり抜け、フェンスの後ろのバッグを手に取った。 「待てよ」 俺は慌てた。置いていかれるのが嫌だったんじゃない。 「お前、俺に気ィ遣ってるだろ」 肩に手を置いて留める。利き腕じゃない方の肩。 「気を遣ってる訳じゃない。お前が壊れると俺が困るから、今日は止めるんだ」 「俺は大丈夫だ」 「大丈夫じゃない。・・・目、赤い」 防具を除けて、近くに目を覗き込んでくる。 心臓がばくばくウルサイのを、気付かれたらどうしよう。 「お前、自分が壊れても俺をベンチに入れようとしてるだろう」 「そんなこと、」 「いいか。俺の女房はお前だ。お前もベンチに入るんだ。 だから壊れるな」 無愛想な短い言葉だけを吐いて、「帰るぞ」と歩き出した。 泣きそうに感動している俺の言葉も、聞いてくれたっていいのに。 「また、明日な」 「あぁ。明日な」 「フロでちゃんと肩をほぐせ。マッサージは覚えたな?」 「はいはい」 「湯には10分は浸かれよ」 「うるせぇな」 「じゃ、明日」 「おう」 昨日と同じような会話を、今日もまた繰り返す。 いつかテレビの向こうで白球を投げるお前を見る、その日まで。 ---- [[ヒーローショーの舞台裏>7-129]] ----

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