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 大事な話があると凛の携帯にメールしたのは昨日のことだ。  眠れなくて、俺はベッドの中でシミュレーションをしていた。 『嬉しいよ』と頬を染める凛。 『ゴメン』とうつむく凛。  妄想なのに、凛がどんな表情をしていても悶えてしまう俺は変態かもしれない。  凛には双子で同じ顔の廉という兄がいる。でも何故か俺が悶えるのは凛の方なのだ。  30分前に来た俺よりも先に、凛は待ち合わせ場所の公園にきていた。  これは脈アリなのかもしれない。俺は話を切り出した。 「す…好きなんだ!」 「好き?」 「き、気持ち悪いよな。でも、もし可能性があるなら考えて欲しくて…」 「恋愛って意味で?」 「恋愛って意味で」 「俺のどういうところが好き?」 「どういうって……」 「顔? 顔なら俺、同じ顔のやつがいるよ?」 「確かに君の顔は、俺の好みど真ん中ストライクだ。でも廉は廉で、凛は凛だし……」 「だから、どういうところが?」  なんだろう? 意外と積極的だったんだな。  ずっと廉の影に隠れているタイプだと思っていたのに。あ? れ? 「廉! お、お、おまっ!」 「チッ。もう気がつきやがった」 「なんでお前が来るんだよ!」 「勝手に間違えたのはそっち」 「メールをしたのは凛の携帯だ!」 「あいつの携帯にロックなんてかかってねーもん」 「うわー、サイテーだ! サイテーだ!!」 「告白相手を間違えるなんてありえない」 「それは認める! でも卑怯だろ、コレは!」 「ただでさえ可愛い弟に男が寄って来るなんて許せないのに。愛があるなら見極めろ」  それに関しては、反論できない自分がちょっとくやしい。 「ま…まさか、今までメールのやりとりをしてたのは、お前だなんて言わないよな」 「言わないよ。たまにしかしてない」 「てめー! どーりでおかしいと思ったんだよ。俺に気があるようなメールがたまにきて」 「凛がお前に気があると思ったから告ったわけ?」 「違うよ。俺も凛も男だし、いくら仲がよくたって勇気がいったよ。でも……」 「でも?」 「俺、東京に進路が決まったんだ。凛はこっちに残るって聞いた。 だから離れる前に、どうしてもあいつの気持ちを聞いておきたくて……」 「もし、凛とうまくいっても遠距離って大変だぜ?」 「わかってる。でも言わずにはいられなかった」  ふいに廉が俺の首に腕をからませて言った。 「顔が好みなら、オレはどーよ?」  予想外の言葉にびっくりした。 「オレも東京に決まった。オレなら近くにいられるけど?」  廉の顔が俺の目の前にあった。俺好みの端正で綺麗な顔だ。でも。 「……凛じゃないとだめだ……」  迷いもなくはっきり言えた。  廉は苦笑いしながら、振り向いて自分の後ろに声をかけた。 「凛、これで不安はなくなっただろ?」  そこには凛が立っていた。気がつけば、凛と待ち合わせていた時間になっていた。  廉は俺の胸に人差し指を押し付ける。 「一言、言っておいてやる。凛はオレと違ってナイーブで、ちょっとしたことで不安になる。 お前がたまに凛とオレを間違えたりとか、凛の前でオレを褒めたりとか、お前の無神経さに どれだけ傷ついてきたかわかってないだろう。まあ、今回は早めに気がついたからいいけど。 あとは凛と話せよ」  廉はさっさと駅に向かって行ってしまった。残った凛はしばらくしてから俺に今の話の返事をくれた。 都合のいいシミュレーションが現実になった瞬間だった。俺はあの日ほど悶えたことはない。  『ごめん、廉』と廉の後姿を見ながら言った凛の小さな声も、 ちらっと見えた廉の泣きそうな顔も、きっと俺の気のせいだ。
双子の弟と間違えて兄に告白 ----  大事な話があると凛の携帯にメールしたのは昨日のことだ。  眠れなくて、俺はベッドの中でシミュレーションをしていた。 『嬉しいよ』と頬を染める凛。 『ゴメン』とうつむく凛。  妄想なのに、凛がどんな表情をしていても悶えてしまう俺は変態かもしれない。  凛には双子で同じ顔の廉という兄がいる。でも何故か俺が悶えるのは凛の方なのだ。  30分前に来た俺よりも先に、凛は待ち合わせ場所の公園にきていた。  これは脈アリなのかもしれない。俺は話を切り出した。 「す…好きなんだ!」 「好き?」 「き、気持ち悪いよな。でも、もし可能性があるなら考えて欲しくて…」 「恋愛って意味で?」 「恋愛って意味で」 「俺のどういうところが好き?」 「どういうって……」 「顔? 顔なら俺、同じ顔のやつがいるよ?」 「確かに君の顔は、俺の好みど真ん中ストライクだ。でも廉は廉で、凛は凛だし……」 「だから、どういうところが?」  なんだろう? 意外と積極的だったんだな。  ずっと廉の影に隠れているタイプだと思っていたのに。あ? れ? 「廉! お、お、おまっ!」 「チッ。もう気がつきやがった」 「なんでお前が来るんだよ!」 「勝手に間違えたのはそっち」 「メールをしたのは凛の携帯だ!」 「あいつの携帯にロックなんてかかってねーもん」 「うわー、サイテーだ! サイテーだ!!」 「告白相手を間違えるなんてありえない」 「それは認める! でも卑怯だろ、コレは!」 「ただでさえ可愛い弟に男が寄って来るなんて許せないのに。愛があるなら見極めろ」  それに関しては、反論できない自分がちょっとくやしい。 「ま…まさか、今までメールのやりとりをしてたのは、お前だなんて言わないよな」 「言わないよ。たまにしかしてない」 「てめー! どーりでおかしいと思ったんだよ。俺に気があるようなメールがたまにきて」 「凛がお前に気があると思ったから告ったわけ?」 「違うよ。俺も凛も男だし、いくら仲がよくたって勇気がいったよ。でも……」 「でも?」 「俺、東京に進路が決まったんだ。凛はこっちに残るって聞いた。 だから離れる前に、どうしてもあいつの気持ちを聞いておきたくて……」 「もし、凛とうまくいっても遠距離って大変だぜ?」 「わかってる。でも言わずにはいられなかった」  ふいに廉が俺の首に腕をからませて言った。 「顔が好みなら、オレはどーよ?」  予想外の言葉にびっくりした。 「オレも東京に決まった。オレなら近くにいられるけど?」  廉の顔が俺の目の前にあった。俺好みの端正で綺麗な顔だ。でも。 「……凛じゃないとだめだ……」  迷いもなくはっきり言えた。  廉は苦笑いしながら、振り向いて自分の後ろに声をかけた。 「凛、これで不安はなくなっただろ?」  そこには凛が立っていた。気がつけば、凛と待ち合わせていた時間になっていた。  廉は俺の胸に人差し指を押し付ける。 「一言、言っておいてやる。凛はオレと違ってナイーブで、ちょっとしたことで不安になる。 お前がたまに凛とオレを間違えたりとか、凛の前でオレを褒めたりとか、お前の無神経さに どれだけ傷ついてきたかわかってないだろう。まあ、今回は早めに気がついたからいいけど。 あとは凛と話せよ」  廉はさっさと駅に向かって行ってしまった。残った凛はしばらくしてから俺に今の話の返事をくれた。 都合のいいシミュレーションが現実になった瞬間だった。俺はあの日ほど悶えたことはない。  『ごめん、廉』と廉の後姿を見ながら言った凛の小さな声も、 ちらっと見えた廉の泣きそうな顔も、きっと俺の気のせいだ。

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