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その時触れられたのは指先だけで ---- 彼はベッドの上でぐっすり眠っていた。 昔大好きだったけど些細なことで喧嘩して、それきり会わなくなった人。 もう会う事なんかないだろうと思っていたのに、 彼が事故に遭って入院していることを人づてに聞いてしまい、 悩んだ末に見舞いに行ったらこの状態だ。 ベッド周りにはいろんな装置が置かれ、 頭には電極のついた帽子のようなもの、鼻の部分にはチューブが付けられ、 腕には点滴の針が刺さってる。 点滴がついていない方の手を握り、声を掛ける。 彼は相変わらず眠ったままだ。 そっと髪を撫でる。また彼の名を呼ぶ。 一瞬むずがる様な表情を見せた後、彼はゆっくりと薄目を開けた。 「○○?」 俺の名前を呼んだ後、彼は震えながらゆっくりと手を伸ばしてきた。 俺のことを触って本当にいるのか確認しようとしているんだろう、 そのまま彼が俺の顔に触れるのをじっと待つ。 触れられたのは指先だけで、彼はその後口角を上げて少し微笑んで。 彼は力無くぱたりと腕を落とし、また目を閉じた。 周りの装置の一部が慌てたように点滅を繰り返す。 俺は側にあったナースコールボタンを力いっぱい押した。 ---- [[三世>7-039]] ----

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