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どうしてお前あんなのと友達なの? ---- 昼休憩から戻ると、前の席に座る先輩が何か言いたげに俺を見ている。 「どうかしました?」 「・・・や、なんもねぇ」 「はぁ、そっすか」 俺がそう答えると、しばらく俺を凝視してから視線をモニターに戻した。 仕事の進め方のせいなのか、いつも昼を過ぎた頃に機嫌が悪くなるこの先輩は、実は俺の想い人だったりする。 モニター越しに盗み見てみると、また眉間に皺を寄せている。 今日も機嫌悪いなあ。と思いながらも、その表情まで可愛く見えてくるから仕方がない。 同僚に「あれが可愛く見えるなんて、おまえは末期だ」と言われたことを思い出した。 「ああ、確かに」 苦笑しながら呟いた声が聞こえたのかそうでないのか、 男にしちゃ長いまつ毛を伏せたまま、モニターから目を離さずに先輩が口を開く。 「前から聞きたかったんだけどさー」 「はい?」 「まぁ、良いやつだとは思うよ」 「はぁ」 「でも・・・どうしてお前あんなのと友達なの?」 先輩の指は、いつも昼食を共にする同僚を指している。 生真面目でむっつりな俺とは違い、フットワークが軽く明るい奴だ。 昔から正反対のタイプと言われ続けているが、高校からずっと一緒だった親友だ。 仲が良くて当然だろう。 「うーん、どうしてと言われましても・・・」 俺がごちゃごちゃと考えている間も、先輩の眉間の皺はどんどん深くなっている。 ああ、やっぱり可愛い。 「つーか、何でそんなこと聞いてくるんですか?」 「・・・っ」 質問に答えずに聞き返すと、先輩の目が微かに揺れた気がした。 「・・・別になんでもねーけど」 モニターから顔を上げて俺と目を合わせた後、目を伏せながらそう答る。 人の目をじっと見るのは先輩の癖だろうか。 こういった態度をとられると、無理だとわかっているのに期待してしまう。 「そういう表情は先輩の癖なんですかね」 「悪かったな、無愛想で」 「違いますよ、可愛いなあと思いまして」 「・・・あ?」 「・・・あ」 しまった。と思った時には遅かった。 するりと無意識に口から出た言葉は、しっかり先輩に届いてしまったようだ。 やばい、引かれたらどうしよう。 ちらりと先輩を見ると、どういうことか首まで真っ赤になっている。 消え去りかけた期待が、また膨らんできた。もしかして。 「ねえ、先輩」 「・・・なんだよ」 「何で赤くなってるんですか」 「はぁ!?」 あ、また眉間に皺が。 これはもしかしてもしかするのか。 「ねぇ先輩って・・」 「あーもう、おまえマジウザい」 俺が言い終わる前に席を立った先輩は、そのままどこかへ行ってしまった。 もしかして、一緒に昼食を食べに出る同僚に嫉妬してくれたのか。 もしかして、いつも昼過ぎに機嫌が悪いのはそのせいなのか。 都合のいい期待がぐるぐる頭を支配しはじめた。 席を立ちながら携帯を取り出してメール作成画面を立ち上げる。 『悪い。明日の昼メシ、一緒に行けなくなった』 気のいい同僚の事だ、理由を話せば笑って許してくれるだろう。 『了解』 同僚からのメールを確認したと同時に、廊下の先に探していた背中を見つけた。 ゆっくり歩いていき、先輩に肩を並べる。 「先輩、明日の昼メシ、何食べましょうか?」 ----   [[想いを口にしたら終わりの関係>20-079]] ----

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