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ヘタレ従と天然主 ---- 「…あ…ああ…」 口からついて出たのは意味のなさない声だった。 だって、と心の中で呟いてしまう。 イギリス料理もフランス料理もイタリア料理も、 それはもう、どんな料理とて主は素晴らしく気品溢れる動作で食事をされる。 食事だけじゃない。 物腰は柔らかく、いつなんどきでも紳士に振る舞われ、 産まれついての高貴な雰囲気を漂わせ… ああ、私ごときが表現するのもおこがましいぐらい、 とても素敵な主だ。 「これはなんだ?」 テーブルを埋め尽す料理の中で、一点を指差し、 主は涼やかな声で斜め後ろに立っていた私に質問された。 そう、とても無邪気に。 出てきた料理を主と客人に説明するのが今の私の役目だ。 今日出す料理のレシピから材料まで、全て頭に入っている。 それなのに、喉がからからに乾いて声が出なかった。 だれだ、今日の客人が蟹が好きだと言ったのは。 蟹が好きなのはまだ許せる。 しかし誰だ今日のメニューを考えたのは。 …ぐるぐるしていてもわかっている。 茹でた蟹が一番美味しいのだからそれをお出しして、と言ったのは主だ。 「これ、おかわりあるかな」 もっと飲みたい。 そう言われて頬が引きつる。 客人は息を飲み、メイドたちもそっと成り行きをうかがっている。 この中で、フィンガーボールの水は料理ではないのでおかわり出来ませんと、 私が告げなければならないのだろうか。 ----   [[うっかりさん>5-989]] ----

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