「5-899」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

5-899」(2010/10/22 (金) 00:07:55) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

医師×リハビリ中の怪我人 ---- 売店の入り口ですれ違ったのは、外科病棟に入院してる高校生の男の子だ。 担当医の先輩が、無口で食が細くてリハビリにも上の空だとぼやいていた。 しかしなかなか美形で、女性陣にはストイックでかわいいと評判、その彼だが、 …一瞬でよくわからなかったけど、今泣いてなかったか? おれはレジ台に豆乳を置いて、おばさんに聞いてみた。 「今出てった患者さん、どうかしたの?」 「あら先生。いえ、それがねぇ…」 次の日、おれは朝食の時間帯に彼の病室を訪ねた。 「あら、森下先生…」 「やぁ、ちょっと彼に用があって。いいかな?」 「そうなんですか?…じゃあ菊川君、私またあとで来るけど、少しでもいいから食べてね。」 そう言って看護士が病室をあとにすると、菊川君は無言でおれを見た。 机の上には、手の付けられていない病院食。 思わず口元に笑みがうかんだおれを、訝しげに見る菊川君。 「ん?なんだ、その目は。いいもの持って来てやったのになぁ…」 持って来たタッパーを見せると、あからさまに興味を示す菊川君。 「なんだか知りたいか~?」 勢い良く首を縦に振る菊川君。面白いなこの子。 「ふっふっふ…おれの実家から送って来た自家製梅干し。」 その瞬間、目を輝かせておれの白衣に飛びついて来た菊川君は、昔飼ってた柴犬を彷彿とさせた。 「いやぁ、菊川君すっかりキャラ変わっちゃいましたよね~」 「まったく、誰よクールでつかみ所のない美少年とか言ってたの」 「それにしても森下先生、よくわかりましたねー菊川君の”梅干し”。」 「ああ、あの子がちょうど売店に探しに来てたときに居合わせたんだよ。…にしても、今時の高校生が、自家製の梅干しがないと食事ができないなんてなぁ。」 「あ!先生っ、森下先生ーっ」 廊下の向こう端で、思いっきり手を振っている菊川君。 あれ以来まさしく犬のようにおれに懐いているんだが…まあリハビリも順調らしいし。 「先生!うちの両親来週には日本に戻ってくるから、うちの梅干し持ってくるって。そしたら先生にも食べさせてあげるよ!」 「はいはい、わかったから…病院で大声出すな。」 まとわりついてくる犬っころの頭をなでながら、やっぱりおれの口元には笑みがうかんでしまうのだった。 ----   [[ゴルゴ>5-909]] ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: