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攻めのピンチに颯爽と現れて助ける受け ---- 大昔から体育館裏への呼び出しといえば告白かリンチのどちらかと相場が決まっているわけで。 できれば前者であって欲しいなぁなんて甘い考えは、目の前に現れた男の巨体によってあっけなく打ち砕かれた。 「……先輩、今時呼び出しとか古いですって。昭和の学園ドラマじゃないんですから」 ふざけて口元を歪める俺には興味なさげに、相手は眼光を鋭くしたまま告げる。 『冗談言うな』とか『最近生意気なんじゃねぇのか』とか。 うわぁすごい、これってマジで昔のベタなドラマのワンシーンみたい。金/八?金/八ですか? 俺は今、古き良きツッパリドラマの一コマに吸い込まれてタイムスリップ中ですか? っつーか、そもそもこの先輩自体天然記念物モンだろ。 今時、まっ茶のリーゼントって、え? ひょっとしてそれはギャグで(ry などとぐだぐだ思っていると、突然目の前に飛んでくる先輩の左の拳。 予想以上に早いそのスピードに、『で、伝説の左!!」などと脳内で突っ込むも、回避できず見事に顔面HIT。 ぬるりとした感触に鼻血が出ているらしいのを感じつつ、今度はこちらから攻撃を。 ――しようとしたところに、前方から飛んできたのはやけに甲高い男の声。 「おい、何してるんだっ!?」 その声に驚いて見上げれば、走ってきたのは現国の矢野。 おいおい。筋肉のみがとりえの体育教師あたりならともかく、この状況でアンタ来ても何の意味も無いだろ。 普段から生徒と間違われるような、チビでガリ痩せ非力の童顔だっつうのに。 けれど、一瞬そちらに気をとられたのがいけなかったのか、俺の拳は空を切って交わされ、 その代わりに相手の深いボディーブローが、俺のみぞおちを強かに抉り削った。 顔はまずいよ、ボディーボディーってか。でも、どこ殴るにせよ教師見てるし、関係ないんじゃ……。 瞬間、そんな事を思いつつ、衝撃に片膝をつく。 「……て、めっ!」 吐き捨てるこちらを無視してさっさと逃げる相手の後姿を見やる俺に、頭上から手が差し伸べられた。 「また喧嘩か?」 「別に、俺から突っかかったわけじゃないっすよ」 何とか体勢を立て直して立ち上がった俺に、矢野が小さくため息を吐いた。 「知ってるさ。だってお前、デカくていかついから上の学年に絡まれるだけだもんな」 仕方なさそうにそう告げたその顔が、なんだか可愛らしく見えたのは俺の気のせいか、違うのか。 「俺はさ、お前が、盗んだバイクをこっそり持ち主に返したり、  雨の中で捨て犬を拾ったりするくらいには優しい奴だって、知ってるよ」 そこで言葉を切ってにこっと笑った表情に、なんだか胸が跳ねる。 あー、やばい。学園ドラマの定番は現状まだ継続中っぽいな、おい。 そうだよ、そうなんだよ。 熱血新米センセーの熱い指導は、最終的にクラス中の生徒をいい子にしちゃうのがお決まりのパターンだよな。 『先生っ、ごめん……』『いいんだ、もういい』『でも』『何も言うな、お前は俺の生徒だろ?』 ……みたいな。で、抱擁しあって二人でぼろぼろ泣いたり夕日に向かって走ったりラグビーで花/園目指したりして。 で、ラストには『俺、先生に色々教えてもらったよ。努力とか友情の大切さとか……」 『そうか、じゃあ、今度はもっと別のコトも教えてあ・げ・る☆』『えっ、そ、そんなことまで……』『あっ、あんっ!!」みたいな……(悶々 ……あれ、いつのまに学園ドラマから教師モノのAVに変わったんだろ……。 っつーか俺、男相手に何考えてんだろ。キモイって!マズイって!! でも、この人相手なら正直やれるんじゃね?とか考えてるのって、どうしてなんだ……。 ----   [[3月32日>5-799]] ----

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