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眼鏡と眼鏡 ---- 「よっ、おひさー!」 「相変わらずバカ元気だな。……ん?」 久々に電話をかけてきて「遊びに行こうぜ、メシはお前のオゴリで!」なんてほざいた バカ友は、前と少しも変わらない調子で挨拶をしてきた。でも、そんなバカ友に小さな 変化がひとつ。 「お前眼鏡なんかかけてたか?」 「いや、かけはじめたのは最近だ。結構似合うだろ?」 「まあな。で、なんで眼鏡なんだ?視力が落ちたのか?」 「ちっげーよ、オシャレだ、オ・シャ・レ。度なんか入ってねえよ」 「……」 なるほど、確かにバカ友のかけている眼鏡は、フレームが細く、レンズには薄く色が ついていて、なかなか洒落たデザインだった。 ……でも、気に食わねえ。小さい頃から目が悪くて、分厚いレンズのダサイ眼鏡をかけ ることを余儀なくされた俺は(中学時代にコンタクトにしたら、体質に合わないのかエライ ことになった)眼鏡の似合うバカ友も、洒落たデザインの眼鏡も気に入らなかった。 「お前ってさあ、昔っから眼鏡かけてるけど全然似合わねえよな」 ……人が気にしてることをズバズバと。どこまでバカなんだこの男は。 小さく見上げて睨みつけると、いきなり視界がぼやけた。目を細めて見れば、バカ友が笑顔と ともに俺から取り上げた眼鏡をひらひらとふっている。 「やっぱお前眼鏡かけてねえほうが絶対いいって。特にそのレモンティーみたいな目が、レンズ で隠されるなんてもったいねえよ」 ――赤い顔を隠しながら、バカ友の手から眼鏡を取って、かけ直す。 「……俺の目なんか誰も見てないだろう」 「あー、もったいない。でもまあいいや。お前が眼鏡かけてりゃ、俺も眼鏡でお揃いだしな」 「……馬鹿」 少しだけ、ダサイ眼鏡も好きになれそうな気がした。 ----   [[眼鏡と眼鏡>5-379-1]] ----

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