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歪んだ愛
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彼を愛したいと思った。
家に帰ると、其処に居るのは見慣れた顔。
「お帰り。今日も仕事遅かったな。晩飯、冷めるところだったよ」
そう言って、笑いながら近寄ってきて。
そんな顔を見るたびに、あぁ愛しいと思い。
それと同時に、
壊したくなる。
「相変わらず上司は嫌な奴なのか?」
俺の内心も知らずに、触れてくるあいつを、強く振り払う。
よろけ、そしてそのまま床に倒れた彼を上から見下ろす俺の表情は。
…きっと、無表情。
「誰が家の中でまで仕事の話をしろと言った?そういう煩わしい事は嫌いだと言っているだろう」
フローリングの床にぶつけた箇所が痛むらしい彼から目を逸らし。
そしてそのまま自分の部屋へと向かう。
と、その前に。
呆然とした顔でこちらを見上げている彼に、聞こえるか、聞こえないかの中間位の声で。
「…許して欲しければ、今日も部屋に来い」
そう言い、ドアを閉める。
彼はきっと来る。だって俺に惚れてるから。
そして俺はまたこんな態度を取り続ける。そうすれば彼は俺に媚び続けるから。
媚びる態度が好きなんじゃない。愛されてるって感じたいだけなんだ。
彼を愛したいと思った。
その愛し方が、例え大きく歪んでいたって。
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[[サボテン>5-369]]
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