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50歳の年の差。 ---- 「ここでいいの?」 「あぁ・・・ありがとう」 いつもは家にいる祖父が、突然出かけたいと言い出したので、 車に乗せてやって、言われるままに走って、 ついたのは、町外れにある墓地だった。 何度も来たのだろう。迷うことのない足取りで進む祖父の背中を見ながら、 数年前に死んだ祖母の墓とは違うし、友人か何かかなとぼんやり思う。 一つの墓の前で足を止めた祖父は、ただただ黙ってその墓を見つめ続ける。 何かを語りかけているのだろうか。 「友達のお墓?」 しばらく続いた沈黙のあと、なんとはなしに聞いてみる。 墓に書かれた名前は、親戚でもなく、見知らぬ名前。 「・・・友達・・・か。そうだな、親友・・・といっていいものかな。」 「よく、ここに?」 「毎年、この時期にはな。寂しがりだったから、  顔を見せてやらないと、怒る気がしてなぁ。」 「ふぅ・・・ん。」 祖父がこんなにも喋るのは珍しい。 ここに眠ってる人は、よっぽど大事な人だったのだろうか。 「もう、50年になるのか・・・。お前さんと、年が離れていく一方だなぁ・・・。」 ぽつり、と呟いた祖父の目に浮かぶのは、 懐かしさと寂しさ ざぁ、と2月の冷気をおびた風が吹き抜ける。 「・・・じぃちゃん、冷えるから。もう帰ろう。」 「・・・そうだな。皆が心配するしの。」 なんとはなく、そのまま祖父が消えてしまいそうで、 それを祖父が望んでいるようで、 耐え切れずに、促すと、いつもの祖父の顔に戻っていることに安堵する。 「もうちょっと、待っててくれるか?お前の傍に行くのを・・・。  50歳離れたジィさんになってしまってるがな・・・。」 来た道を戻ろうとした時に、祖父が墓を振り返って、 呟いた言葉と、見たことのない祖父の表情は、 見なかったふりをしようと、なんとなしに、そう思った。 ----   [[50歳の年の差。>5-329-2]] ----

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