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ミラーボール ---- いいから来てくれ、と幼馴染から半ば無理やり渡されたのは、 小さなライブハウスでの小さなイベントのチケットだった。 「マジおもしれーから!絶対来いよ!」 ここ何年も連絡ひとつよこさなかったくせに、この野郎。なんて心で悪態をつきながら、分かったよ、と頷いた。 あいつが最近ダンスに夢中になってんのは知ってたけど、大して期待はしてなかった。 冷やかし半分、義理半分って感じだった。 それなのに。 俺はステージで舞うあいつから目を離せずにいる。 光と爆音の渦のなかで、周囲からは野次やら嬌声やらが飛び交って。 皆思い思いに身体を揺らしているというのに、ただ一人棒立ちだった。 音とリズムに合わせて動く身体は、たまに人間かと思うほどのトリッキーさで客を魅了し。 メンバーとの大技が成功した時なんて、俺も思わず歓声を上げた。 いくつもの派手なパフォーマンスをやっているのに、客席へのアピールも忘れない。 その、観客のテンションとビートとあいつの動きがはまった瞬間の、あいつのはにかんだような笑顔。 あんな顔、初めて見た。 何だよ、何だよ。俺と会ってない間にこんなにカッコよくなってんじゃねぇよ、馬鹿。 曲のキメで隣の奴がダミ声で叫んだ。 「アツシ、チョーカッコイイー!!!」 俺も、そう思う。 ----   [[ミラーボール>5-279-1]] ----

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