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……なーんて、な! ---- 「好きだ」 言った瞬間、後悔した。 竹村はひどく驚いた、そして少し途方にくれた顔をしていた。 「せ…ん、ぱい」 「お前が、好きだ」 もう一度言いながら、改めて向き直ろうと足を踏みかえる。 途端、竹村の身体がびくんと跳ねた。 あぁ、やっぱり。 そうだよな。同じ男から告白されたって、気持ち悪いだけだよな。 想定どおり、俺は唇の両端を持ち上げた。 「なーんて、な!」 「…え?」 「嘘だよ、う・そ」 言われた意味がうまく理解できないのだろう、竹村は目をしばたたいてこちらを凝視した。 「今日でお前とはお別れだろ。せっかくだから、お前のビビり顔でも土産にしようと思ってさ」 やー面白かった、と背を向ける。 これで大丈夫。竹村だって、こんなこと、じきに忘れるだろう。 後ろ向きのまま、俺はおざなりに手を振った。 「じゃーな。俺、これからクラスの奴らと約束が」 「先輩っ」 一瞬、何が起きたのか解らなかった。 竹村が、俺を、抱きしめている? 「なっ、竹村?!」 「先輩、俺…」 ばか、やめろ。泣いてるのがばれちまう! 「や、はなせ、」 「聞いてください!」 初めて聞く強い口調に、ぎくりと動きが止まる。 きっと、解ってしまったんだ。あれが本当だって。 うまく嘘にできたと、思ったのに。 竹村の言葉が怖くて、俺は顔を両手で覆った。 俺の耳に、切なげな声が届く。 「先輩。俺、俺は――」 この後を知っているのは、俺と、竹村と、吹き抜けていった風だけ。 ----   [[敬語眼鏡×アホの子>5-189]] ----

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