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あと一歩が踏み出せないヘタレ攻と俺様受 ---- 「馬鹿じゃねーの、あんた。またそんなモン手伝ってんのか。どこまで御人好しなんだよ、ほら貸せ」  呆れた顔をした高瀬はレポート用紙の山の半分を引き取って、俺を見上げている。何だかんだと人がいいのは お互い様じゃないかな、と思うのはこんな時だ。 「い、いいって高瀬。お前まだ足の調子悪いんだろう?」  高瀬は先日、怪我をした。図体がでかいがいかんせん運動神経の鈍い俺がけつまづいた時に、巻き込まれた形 でだ。申し訳ないやら、情けないやらで恐縮する俺に、しかし高瀬は自分が気付かなかったのが悪い、と謝罪 すらさせてくれない。意地っ張りなのか、見得張りなのか。多分両方だろう。でも、そんな素直じゃない彼が、 実は随分と前から俺は好きだった。……未だに、告白すら出来ていないけれど。 「~~っ、もう、過保護……」  舌打ちして、高瀬はわざとのように足音高く歩いていく。 「……痛っ……」 「高瀬っ」  俺は慌てて駆け寄る。しゃがみこんだ高瀬の顔色は青い。折角の可愛い顔が台無しだと、こんな時なのに俺は どうでもいい事を考えた。 「悪い、これ持ってくれるか? 保険室まで行こう」 「え、そりゃいいけど……って、おい!」  両腕に抱え上げられた高瀬は珍しく焦ったような声を出した。でも、そんなのに構ってられない。俺は高瀬を 横抱きにしたまま、保健室に向かう。こんな時ばかりは、意味なく伸びた身長も役立つ。 「は、ずかしいから降ろせ! 少し休んでりゃ平気だっつの」  じたばたと暴れながらも、ちゃんとレポートを抱えているあたり律儀だ。そんなほほえましい様子に、思わず 俺は笑いそうになる。だが、離す気は無かった。 「その間こんな冷えた廊下でしゃがんでるのか? そんなの、俺が許せない」 「ヘタレの癖に何偉そうな口……! だったら、もっとはっきり言えっての……」  ぼそりと付け加えられた言葉の意味を取りかねて、俺は足を止めた。 「何? 高……」  首に回った細い両腕。ばさばさと落ちるレポート用紙に焦りつつも、俺は高瀬の突然の行動に身動きが取れ なくなっていた。 「俺のこと、何でそんなに構うんだよ? お前さぁ、何か言う事あるだろ、俺に」 「たか、せ?」 「珍しく気長に待ってやろーかなーとか思ってたのにさ。お前、不用意に近付き過ぎ」  こつんと、額が寄せられた。間近にある、俺の好きな声、好きな顔、好きな……。 「高瀬、実は俺……」  好きな、彼。 ----   [[……なーんて、な!>5-179]] ----

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